updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

2300. 派遣先が私を気にいって、もう4年も同じ派遣先会社の同じ部署で働いているのですが、派遣先の従業員と同じ仕事をしているのに給料や賞与がかなり違うのが、納得できません。
   ご相談の内容は、日本の労働者派遣制度の最も問題となる点です。

 労働者派遣は、派遣先の一時的な需要に応ずることを目的にしています。
 労働者派遣法が制定されたときに、派遣というのは、臨時の必要に応えるものであり、常用雇用に代替することは許されないということが確認されています。国会でも、本来、常用雇用で労働者を雇い入れるべき仕事(部署)を、派遣で代替することがないように、という異例の附帯決議が付けられました。
 長期間同じ派遣先で派遣労働者が就労することは、臨時的な需要に応えるものという労働者派遣法の建て前に反することになります。

 つまり、ご相談者が担当されている業務は、派遣先にとって一時的な必要に応ずるための業務ではなく、恒常的業務と考えられるからです。本来、そのような恒常的業務は、派遣労働者に担当させるのではなく、正社員が担当すべき業務であると考えられます。
 労働省は、同じ労働者が長期に同一派遣先に派遣されることは、派遣で常用雇用に代替することにつながるとして、3年を超える同一派遣先への派遣をやめるように通達で行政指導をしています。

 特定派遣先への3年以上の派遣禁止

 労働者派遣法は、第26条第1項で、派遣元と派遣先の間で締結する労働者派遣契約に定めるべき事項を示しています。
 労働者派遣法第26条(労働者派遣契約の内容)

 労働者派遣契約(当事者の一方が相手方に対し労働者派遣をすることを約する契約をいう。以下同じ。) の当事者は、労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣契約の締結に際し、次に掲げる事項を定めるとともに、その内容の差異に応じて派遣労働者の人数を定めなければならない。


 そして、第26条第1項第4号には、労働者派遣契約で定める事項として  「四 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日」をあげています。

 さらに、この労働者派遣の期間については、第2項で、

 「労働大臣が当該労働力の需給の適正な調整を図るため必要があると認める場合において適用対象業務の種類に応じ当該労働力の需給の状況、当該業務の処理の実情等を考慮して定める期間を超える定めをしてはならない。」

 となっており、一定期間以上の定めは禁止されています。
 つまり、労働者派遣は、原則として長期の派遣であってはならない、ということで、その上限の期間を労働大臣が定めることになっています。

 この上限の期間は、具体的には、次のとおり決められています。
 (平成2年労働省告示第83号)

 (A)期間制限なし

 労働者派遣法施行令 第11号の業務 建築物の清掃
           第12号 建築設備の運転点検整備
           第13号   のうち
                   建築物・博覧会会場の駐車場管理
                   附属設備の維持管理
           第21号 テレマーケィングの営業
 (B)期間1年間

    (A)以外のすべての対象業務

 ご相談の内容では、担当されている業務は、第2号かだい16号ですので、労働者派遣契約の期間は1年間に制限されることになります。

 ただし、労働省は労働者派遣契約の更新も認められるとしています。しかし、

 「派遣先における常用雇用の機会が不当に狭められることを防止するため、一般派遣元事業主について、合理的な理由なく同一の派遣労働者(期間の定めなく雇用されている者を除きます。)について就業の場所及び従事する業務が同一の労働者派遣を継続して3年を超えて行わないこととされています。」

 「ここで『合理的な理由』には、3年を超えた日から起算して1年以内にその業 務が消滅することが確実であると認められること及び派遣労働者の就業時間が夜間 である、あるいは就業日数が著しく少ない(おおむね月間7日未満)、就業時間が 著しく短い(おおむね週間15時間未満)等当該派遣先における通常の労働者の勤 務時間帯と著しく異なっていることが考えられます。」
(労働省職業安定局編『新・労働者派遣法の実務解説』(労務行政研究所)191頁)
 この「3年」という上限はどこから出てくるのか、根拠は示されていません。

 労働省の立場から逆に考えると、
   にも、3年を超える労働者派遣が例外的に認められることになります。
 ご相談の場合に、もし、このアからエに該当するときには、3年を理由にして、派遣を打ち切る理由はありません。

 派遣期間を制限をする理由は、
 「派遣先が安易に派遣労働者を利用する事態を防止し、派遣先の労働者の雇用の安定を図ろうということです」
 とされています。(労働省職業安定局編『新・労働者派遣法の実務解説』(労務行政研究所)、189頁)

 ここでは、派遣が広がることによって、派遣先の労働者(正社員)の雇用の安定が危うくなることを防止するために、派遣期間が制限されるとなっています。

 派遣先が正社員としては採用しないときには、3年を超えての同一労働者の同一派遣先への派遣は許されない、というのが労働者派遣法と労働省の建て前になっています。
 逆に、それでは派遣労働者の「雇用の安定」はどうしてくれるのか、という問題が生じます。ドイツであれば、1年を超えて、同一派遣先で就労すれば、派遣先の正社員になると、労働者派遣法が定めています。しかし、日本の労働者派遣法では派遣労働者が派遣先で就労できなくなるだけで、派遣先での正社員化といった本来の解決については何の保証もありません。まさに、法律の不備(欠陥)です。

 私は、同一派遣先に長期に(3年を超える場合など)派遣就労し、一時的な必要ではない恒常的業務に従事しているときには、派遣先との間に雇用関係が成立する場合があると考えています。つまり、ドイツ法が明文で定めている内容を法律の解釈として採用している訳ですが、残念ながら少数説です。これまで真正面から裁判で争った事例はありません。しかし、対象業務外の違法派遣など、他に有利な要素があれば、派遣先との雇用関係成立が認められる余地は十分にあると思います。

 また、『がんばってよかった 派遣から正社員へ』では、裁判といった時間がかかり、結果についての保証がない道だけではなく、労働組合の力によって、派遣労働者の正社員化の例を紹介しています。
 とくに、派遣先の労働組合が、派遣労働者の問題を自分の問題として取り組み、団体交渉をはじめとして色々な方法を追求している経験を紹介しています。

【関連ページ・リンク先】
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 8025.派遣終了後に派遣先から直接雇用したいといわれたら?
 8030.「正社員に」なることを勧めるのは、職業安定法違反?

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