長岡京市立保育所人権侵害救済申立ニュース 1995年3月28日 

                                     文責 脇田(申立世話人)


   京都弁護士会(人権擁護委員会

     今井市長に要望書送付

    人権侵害の保育行政を改善するように   

  3月17日、京都弁護士会人権擁護委員会(委員長 彦惣弘氏)は、  こま切れ保育やめること等を求めた私たち長岡京市の保育所保護者の人権救済申し立てを受け止め、今井民雄市長に対して要望書を郵送し、具体的な改善の措置をとるように求めました。

  この要望書の写しが送られてきましたので、ご報告します。

 要望の趣旨として次の2点の具体的改善を要望しています。

 当会は貴殿に対し、長岡京市立保育所において以下の ような措置を取られるよう要望する。

 ■午睡時間帯においても、児童福祉法45条1項に基づく児童福祉施設最低基準に定める保母有資格者数が確保されるように、保母有資格者を配置すること。

 ■保育所内において、保護者会のニュースや連絡文書の配布等について妨害を行わないこと。

 1993年11月申立て

1993年11月30日、私たち長岡京市立の保育所に子どもを託している保護者とそのOB15名は、それまでの6年間の市の保育行政と市立保育所(今里、開田、神足、新田、滝ノ町、友岡、深田の7保育所)の運営が、子どもの権利とその保護者の権利を尊重しないものであると考えて、京都弁護士会に人権侵害救済の申立てを行いました(第2次申立を含め最終的に21名の申立てになりました)。

 申立ての内容は各申立人ごとに異なりましたが、次の3点の指摘は共通でした。つまり、(1)1日のうちに子どもを担当する保母職員が、早朝のパート保母、午前中の正規保母、昼休みのパート保母、午後の正規保母、夕方のパート保母と、5人から6人もコロコロと入れ替わる「こま切れ保育」体制、(2)子どもの保育所での様子を保護者に知らせない保育所運営、(3)保護者会に対する長岡京市当局および保育所長の否定的対応の3点です。

 まともな話合いなし

 私たちは、長岡京市立保育所の状況が、子どもの基本的な人権を侵すものであり、こうした状況は早急に改善されなければならないと考えました。そして、市の保育行政担当者や各保育所長らに、異常な保育所運営を改善するように、繰り返し要望するとともに、ねばり強く話し合いを求めました。

 しかし、保護者の願いに反して、まともな話し合いの機会やその結果は得られず、年々、保育内容、保育体制などが急激に悪化していました。

 慎重で詳細な調査

 今回の京都弁護士会人権擁護委員会の要望書は22頁にも及ぶ大部なもので、申立ての概要、調査の概要に続き、認定した事実を詳しく述べています。

 そこでは、1993年10月1日からの正規保母の変則勤務体制と、1日3回のパート保母の勤務体制が詳細に認定されています。また、引き継ぎ時間ゼロ化、アトピー児の給食の配慮、保護者、保護者会との話し合いについても、客観的な立場から事実を確認しています。

 そして、その判断の前提として、(1)保育所が次代を担う子どもが健やかに育つために重要であること、(2)子ども権利について1994年に日本も批准した子どもの権利条約の意義を示しています。

 5点について判断

 そして、具体的な判断として、次の5点を指摘しています。(一)保母配置基準と子どもの保育を受ける権利、(二)引継時間ゼロ化問題、(三)給食におけるアトピー性体質児童に対する配慮のとりやめ等、(四)保護者に保育内容を知らせる努力、(五)保護者会ニュースなどの配布の妨害についての問題点が実に詳しく検討されています。

 具体的な人権侵害

 結論としては(一)と(五)について明らかな人権侵害であることを認め、今井民雄市長に改善の要望をしています。さらに、それ以外についても、明らかな人権侵害とは言い切れないが、「これらの事実を一連の経過として総体的に見るならば、子どものよりよい保育を受ける権利にとってきわめて由々しい状況にあると言える」と指摘しています。

保護者(会)との話し合いを

 最後に、「市は、保護者・保護者会の要求等に対して、一方的、硬直的対応をとることが多いように見受ける」とし、子どものために、「保護者・保護者会とねばり強い話し合い、柔軟な対応をして、お互いの信頼関係を回復し、よりよい保育を実現するために協力しあう関係を築いていく努力をされるよう強く期待する」と結んでいます。

 要望書は、私たちの申立てを真剣に受け止めた詳細で説得力のあるものです。委員の方々が多忙ななか、長期にわたっての検討に敬意を表したいと思います。

2度目の改善要望書

 長岡京市の保育行政にとって人権侵害を改めるように、京都弁護士会から要望されたのはこれで2回目になります。すでに、市立保育所の保母職員が生理休暇を取得しようとしたときに文書を破り捨てたこと等をきっかけに人権侵害救済の申立が出され、1992年2月、京都弁護士会人権擁護委員会は、今井民雄市長に対して改善の要望書を出していました。

 長岡京市は、市民憲章で人権の尊重を市の基本理念としています。ところが、市民の先頭に立って人権を守るべき市長や保育行政担当者・市立保育所所長らの指導的な市職員が、京都弁護士会という公的な法律専門家団体から2度にわたって人権侵害を改めるように求められたことは、きわめて重大なことだと思います。

今後も話合いを

 しかし私たち保護者はこれからも、市立保育所が自由で豊かな雰囲気をもった、よりよい保育の場となるように、保育行政担当者や保育所長にねばり強く話し合いを求めていきたいと思います。

 保育所保護者、長岡京市民の皆さんのご理解とご支援を心よりお願いいたします。 ぜひご意見をお寄せ下さい。


  

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