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第156回  工房の 太鼓の響き、心の響き

最初に、その音に気付いたのは、麝弐猪だった。

 ” ドンド〜ン ”

「ねぇねぇ、何処かで御祭りの音がしない?」
「? いいや、 何にも聴こえないけど。」
「何にも聞こえね〜ぞ。」
「そうかなぁ、確かに聴こえたんだけどなぁ。」

 ” ドンドンド〜ン!! ”

「ほら、ね、今、太鼓の音がしたよね。」
「うん、確かに。」
「こんな時期に、御祭りなんてあったっけ?」
「どこで叩いてるんだろうねぇ。」

 ” ドドドン! ドドドン! ハッ! ”

「何か、近くなって来た様な気がするよ。」
「そ、そうだね。」
「うんうん。」
「行って見ようよ。」
「そうだね、行って見ようか。」
「そうだな、言って見ようぜっ!」


 ” ハッ! ハッ! ドドッドドド〜ン! ドドッドド〜ン! ハッ! ”




「ち、近いな。」
「う、うん。 どんどん音が大きくなって来てるし。」
「でも、凄い音だよね。」
「うん、凄いよね。」
「でも、、、、。」
「ん? でも、何だよ?」
「太鼓しか聞こえないよね。」
「そうだね、これだけ近付いたんだから、御囃子も聴こえても良いのにね。」
「太鼓が大き過ぎるんだよ、きっと。」

いつしか、輝豸雄達は、走り出していた。

 ” ハッ! ハッ! ドドッドドッドドンドドッン!! ハァッ! ”


「きっと、この裏だよ。」
「そうだね。そこを曲がれば、、、。」
「いよいよだな。」


 ” ハァ〜!! ドンドン! ハッ! ”


どんどん、音が大きくなってきている。
輝豸雄達が最後の角を曲がろうとした時、、、


    ド ッ カ 〜 〜 ン ! ! 


「なっ、なんなんだ!」
「い、急げっ!」
「う、うん。」


  


角を曲がった輝豸雄達が観たものは、
立ち尽くす 鬼 の後姿だった。

                                                   第157回に続く