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第151回  工房の おそらくは其れさえも平穏なタチコマな日々


その日、は朝からとってもいいお天気だった。

そんな陽気に誘われて輝豸雄は散歩に出かける事にした。

「いい天気だなぁ。
 空は青いし、空気は美味しいし。」

何処かで鳥の囀りが聴こえる。

「いい天気だなぁ。」
今日何度目かの言葉を口にした時だった。

   ドンッ 

輝豸雄は何かにぶつかった。

慌てて周りを見回したが、何も観えなかった。
何かの気のせいかと思って前に進もうとすると、

   ドンッ 

やはり何かにぶつかった。

何かある。
何か見えない者が目の前にあるんだ。
輝豸雄は目を凝らした。


   プシュ〜ッ

「あ〜ら、輝豸雄くんじゃない。
 どうしたの、こんな処で。」
「素子さんこそ、こんな処で光学迷彩なんて使わないで下さいよ、
 気付かないでぶつかっちゃったじゃないですかぁ〜。」
「ごめんなさい。うっかりしてたわ。」


  


「じゃあね、輝豸雄くん。」
「あっ、はい、さようなら、素子さん。」
「テデオクン、バイバ〜イ。」
「タチコマも元気でね。」

走り去っていく二人(?)を見ながら、輝豸雄は深呼吸をした。

「本当にいい天気だ。」

輝豸雄は、もう一度青い空を見上げた。

                                                   第152回に続く