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第145回  工房の 届かぬ想い 〜 輝豸雄の場合 〜



輝豸雄は、傍らに横たわる彼女を前にして、何も考える事が出来なくなっていた。


”僕は、、、、、。
 僕はいったい、、、。


輝豸雄は、じっと彼女を観た。
疲れて寝ているのか、
微かな寝息が聴こえる。


大きな瞳、
  金色の髪
    しなやかな肢体
       学園のアイドル・・・

そんな彼女が、今、
自分の隣で眠っている。


”僕は、
幸せなんだろうか?”


輝豸雄には解らなかった。


彼女は言う。

   「輝豸雄の事が好きよ。」
   「貴方だけを観てる。」
   「笑って、輝豸雄。」


輝豸雄が笑えば、彼女も微笑む。
彼女を見つめると、何故か嬉しくなる。

「輝豸雄は、私の事が好き?」
「も、勿論さ。」

輝豸雄のその言葉は、嘘ではなかった。

 その時は、嘘ではなかったのだ。


                                                   第146回に続く