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第136回  工房の 輝豸雄の秘密    〜秘密の小箱〜

「はい、ご苦労様。
 今月のお給料だよ。 無駄遣いするんじゃないぞっ!(笑)」
「何言ってんだい。くま旦那みたいな無茶な買い物なんてしないよ。
 なっ、みんな!。」
「そうですよ、くま旦那さん。無駄遣いなんてしませんよ。」
「せんよぉ〜。」


今日は、工房の給料日だ。
食堂の真ん中で、くま旦那が、皆に給料を手渡している。

封筒を開けて中身を確認する者、
すぐにポケットに仕舞う者、
銀行へと出かける者、
みんなの顔が活き活きとしていた。


「お〜い、みんなで飲みに行こうぜ!」
甘栗が声を上げた。
「うん、行こう!行こう!」
「久し振りだなぁ〜。」
「先月行ったお店は止めようよ、高いばっかりで美味しくなかったしさ。」
「そうだな、あそこは不味かったな。」
「どこにしようか。」
「そうだなぁ、、、。」

ワイワイと騒ぎながら玄関に向かって歩き始めた時、
甘栗は、輝豸雄の姿が見えない事に気が付いた。

「お〜い、輝豸雄観なかったかぃ?」
「観なかったなぁ。」
「先に行ったんじゃないの?」

「う〜ん、、、、。」

甘栗は少し考えると、言った。

「みんな、先に行っててくれ。輝豸雄を連れて後から行くからさ。」

甘栗は、踵を返すと、階段を登っていった。




     

「さて、貯金、貯金 と。」



輝豸雄は、お給料を受け取ると、さっさと自分の部屋に戻っていた。
部屋の片隅から、踏み台を運んでくると、帳場箪笥の前に置いた。


踏み台を登り、一番上の引き戸を開けると、、、、。
其処には、輝豸雄の秘密の貯金箱があった。
誰にも教えた事の無い、秘密の貯金箱だった。


「えへへ、、、。
 だいぶ貯まったかな?」

輝豸雄が貯金箱を元に戻そうとしたその時、ノックの音がした。


                                                   第137回に続く