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第131回  工房の    〜  秘  密  〜

「ねぇ、ねぇ、くま旦那さん。
 ちょっとお話があるんですけど。」
「ん? 今ちょっと忙しいんだけど。」
「忙しいって、何もしてないじゃないですか!」
「大人には、色々あるんだよ。」
「へぇ〜そうですかぁ。 ふ〜ん。
 じゃぁ、くま女王さんに話してこようっと。
 面白い物見つけちゃたしぃ〜。」
「! ?」
「うふふ。 じゃ、くま旦那さん、またねぇ〜。」
「て、輝豸雄くんっ! ち、ちょっと待ちたまえぇ〜。
 な、何を、 み、見つけたのかなぁ〜?」
「忙しいんでしょ、またにしますよ。」
「い、いや、他でもない輝豸雄の話だ。 ゆっくり話を聴こうじゃないか。」
「いいですよ。くま女王さんに・・・。」
「ま、そんなに硬いこと言わないで、ねっ、ねっ、ねっ。」
「そんなに言うのなら、、、、。」
「そうそう、さすがは輝豸雄くん、いやぁ、話がわかる仔熊だ。」
「それほどでも。」
「で、で、な、何を見つけちゃったのかなぁ?」
「えへへ、実は昨日、3階の資料室を掃除した時にですね。」
「そ、掃除した時に、、、どうしたんだい?」
「えへへ、見つけちゃったんです。」
「な、な、な、何をぉ?!」
「くま旦那さん、買ったでしょ。」
「な、な、何を?」
「これですよ。」
「あっ、、、、、。 
 て、輝豸雄、お、お前何処でこいつをっ!」
「だから、資料室を掃除した時に。」
「か、隠しておいたのにぃ〜。」
「えへへ〜、見つけちゃったんですよぉ〜。」
「・・・・・・・・。」
「いいのかなぁ、こんな物買っちゃって。」
「だ、だ、だから、そ、そ、それは、資料だよ、資料!」
「ふ〜ん。 そうですか。」
「そうだよ。」
「何に使うんですか? 資料って。」
「いろいろだよ。いろいろ。」
「ふ〜ん、そうなんだ。
 でも、資料なら、くま女王さんに見せてもいいですよね。 じゃ、ぼくはこれで。」
「ま、待って、輝豸雄くん。」
「 ? 」
「い、いや、輝豸雄さま。それだけはご勘弁を。」
「うふふ。 いやです。」
「そ、其処を何とか。」
「いやいや、資料だし。」
「お願いします、輝豸雄くん、いや、輝豸雄さま。
 くま女王に知らせるのだけは、勘弁してくださいっ! お願いだから〜。」
「・・・・・、・・・・。」
「お願いだよぉ〜。」
「そ、そんなに怖いんですか?」
「コクコク。(首を振る音)」
「そ、そこまでくま旦那さんが言うのなら、、、。」
「じ〜。(輝豸雄を見つめる音)」
「わ、解かりましたよ、だから、そんな眼で観ないで下さい。」
「て、輝豸雄〜。あ、ありがとうぅ。」
「でも、、、。」
「 ? 」
「どうして、そんなに怖いのに買っちゃうんですか?」
「そ、それは、、」
「それは?」
「そこに、ガンダムが在るからだ。」
「へ?」
「ガンダムが在る限り、我々は多々買い続けなければならないんだよ。」
「そ、そうなんですか?」
「そうなんだよ、輝豸雄。
 哀しいけど、これが現実なんだ。」
「わかりました、くま旦那さん。
 くま旦那さんが、くま女王さんに黙って○○○を買ったことは、僕の心に仕舞っておきますね。」
「ありがとう、輝豸雄。
 僕が、○○○を買ったことは、僕と輝豸雄だけの秘密だぞ。」
「わかりました。」
「ありがとう。」
「でも、くま旦那さん。」
「何だい?」
「出来るだけ、無駄使いは止めた方がいいですよ。」
「・・・・。」
「じゃぁ、僕は行きますから。」
「あぁ。」
「では。」
「・・・・・。
 でも、でも、僕は、多々買い続けなくちゃいけないんだ。
 走り続けなくちゃいけないんだ。」

                                                   第132回に続く


編集者註
この第131回には、発表当初、写真が一枚描かれていました。
そこには、今回の話の中に出てくる○○○が写っていたのですが、
輝豸雄氏の「くま旦那との約束だけは守りたい。」という
強い意志により、削除させて頂きました。