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第126回 工房の ” 中 の 人 など 、 、 、 、 。 ”
「ハイ! 、 カァッ〜トッ!」
監督の声が、スタジオ中に響き渡った。
「ダメだ、全然ダメだよ。」
監督の声は、とてもよく響く。
まるで、テノール歌手の様だ。
「特に、そこの3人。
ちょっとこっちに来て。」
輝豸雄達のことらしい、監督が輝豸雄達に向かって進んでくる。
輝豸雄は、自分が緊張している事に気付いた。
「いいかい、このシーンは、連邦軍の本拠地であるジャブローに、 ジオン軍が総攻撃をかけるシーンなんだよ。
戦争なんだよ。
ちゃんと、自分の役割を理解して、演技をしてくれないと困るんだよ。」
監督の指摘は厳しかった。
輝豸雄達は、重い着ぐるみから顔を出して、監督を見た。
「特に、真ん中の君!
出だしがちょっと遅れたり、途中で止まったりしている様だけど、大丈夫?」
「君たちは、映画の中では ” アッガイ ” なんだよ。
頑張ってもらわないと。」
監督の言葉の一つ一つが、輝豸雄の心に突き刺さる。
「わかった?」
「ハイッ!」
「はぁ〜ぃ。」
「はい。」
” 3倍やろう。 ”
輝豸雄は心に誓った。
” 自分に出来る事の3倍頑張ろう。 ”
” 大役に任命してくれた監督の為にも。 ”
” 映画の完成を待っている、全国の子供たちの為にも。 ”
「それじゃぁ、シーン#126 ジャブロー侵攻。
行くよ。」
監督の声が、再び響き渡った
輝豸雄達は、カチンコが鳴るのを、今か今かと待ち侘びていた。
第127回に続く