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第123回 工房の 夏 の 想 い 出
陽射しは、飽きるほど高く、そして強かった。
「今年は、何時もにも増して、暑かったよな。」
「う、うん。」
「まぁ、暑かったお陰で、西瓜もメロンも美味しいんだけどね〜。」
「う、う〜ん。」
「? どしたの?麝弐猪。」
「ね、ねぇ、、、。」
「ん?」
「輝豸雄くん、何処に行っちゃたのかなぁ?」
「・・・・・・・・。」
「如何して帰って来ないのかなぁ。」
海辺の風は何も言わずに二人の間を吹き抜けていった。
頬にあたる風は、潮の香りがした。
「そうだなぁ、、、。」
「何?」
「まぁ、きっと帰ってくるさ、アイツは。」
「・・・・・・・・・。」
「今に、お前にも判る日が来るさ。」
「 ? 」
「どんなにやせ我慢したって、夕暮れ時にはお腹が空くってことさ。」
「う〜? なに言ってるのかわかんないよっ!
どうして、帰ってこないのさっ!」
「今年の西瓜は美味しいなぁ。」
「ちゃんと、僕の質問に答えてよぉ。」
「お前の分のメロンも食べちゃうぞ。」
「えっ、ダメダメ! ぜ〜ったいダメ!」
「つまりは、そういう事さ。」
「 ? 」
「そう、アイツのメロンは何時だって此処に或るのさ。」
「もう、訳判んないよぉ。」
「ふふふ。」
「あぁ、もう判んない!
僕も食べようっと。」
「そうそう。 今年のメロンは美味いぜぇ。」
” 早く、食べに帰って来いよ、輝豸雄
みんなが、待ってるぜ ”
甘栗は、心の中で呟いた。
もう、夏も終わりに近い。 蜩の聲が聴こえた様な気がした。
第124回に続く