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第102回  工房の 突然の再会


 ” てでお〜っ!! 逢いたかったよ〜!”

突然の大声に輝豸雄が慌てて振り向くと、何かが輝豸雄の胸に飛び込んできた。


  ” 逢いたかったよぉ〜 ”


その小さな生き物は、輝豸雄に抱きつくなり、大きな声で叫び続けていた。


  ”逢いたかったよぉ〜、てでお、、、。急にいなくなっちゃうんだもの、、、。
   寂しかったよぉ〜、、、。”


目の前で泣きじゃくる小さな女の子を抱えて、輝豸雄は記憶の検索エンジンをフル回転させていた。
様々な記憶が、輝豸雄の脳裏を過る。


そして、一人の女の子が、うかんできた。
  
   いや、、。
    
       しかし、、、。
      
           まさか、、、、。
         
                そんな筈はない、、、。
             
                      で、も、、、、、、、、、、、、。


  「も、もしかして、、、。」
 
  「う?なぁに、てでおくん?」
 
  「も、もしかして、よつばちゃん?
   よつばちゃんなの?」

  「もしかしてってなによ、失礼ね。
   あたしよ、よ・つ・ば。
   正真正銘、あ・な・た のよつばよっ!」

  「はぁ、、、。」

  「なによ、てでおくん、
   こんなに久しぶりにあたしに逢えたのに、
   溜息つく事はないでしょ!
   もっと、素直に喜んでよ、てでおっ!」

  「よ、よつばさん、」

  「恥かしがらなくてもいいわよぉ。
   昔みたいに、 ” よつば ” でいいわよ。」

  「い、いえいえ、、。ど、どうして此処が
   判ったの?」

  「随分探したのよ、てでおくんっ!
   友達に聞いても、だ〜れも知らないって
   教えてくれないし、
   はっきり言って、途方にくれていたの、あたし。」
   


 「そ、それでどうして此処が、、、。」

 「倶馬美小母さんに訊いたら、教えてくれたの。」

 「えっ。」

 「昨日いなげやで買い物してたら、偶然倶馬美小母さんに逢ってね。
  もう、何年もてでおくんに逢っていなくて寂しくてたまらないっ言ったら、
  此処にいるって教えてくれたのよ。」

 「ちっ、余計な事を!」

 「何? てでおくん、何か言った?」

 「何にも言ってないよ、僕は。 僕は言ってないよ、何も。」

 「あはは、てでおくん、なにか可笑しいよ。
  あはは。あぁ久しぶりに逢えて嬉しいなぁ、あたし。」

 「ぼ、僕は、、、、」

 僕はそうでもないよ、と言いかけて、輝豸雄は言葉を飲み込んだ。
 よつばちゃんに罪は無い。
 そう、よつばちゃんに罪は無い、、、。

 「はぁ、倶馬美小母さん、、、あなたは、、、いったい、、、。」

 朗らかに笑う彼女の前で、ただ、ただ、苦笑いを浮かべる輝豸雄だった。


                                                   第103回に続く