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第97回  工房の プラネテス   その3 〜ネバーギブアップ そして〜

「輝豸雄!
 何事も、やる前から諦めちゃだめだ。
 出来なきゃ、ひたすら練習する。
 それでも出来なきゃ、もっと、もっと、練習する。
 足が届かなきゃ、届くように工夫すればいいじゃないか!
 簡単に諦めるようなヤツは俺の教え子じゃないな。」

輝豸雄達は、声のする方を振り返った。

「コッ、コーチ〜!!
 いっ、生きていたんですか?」

輝豸雄は心の底から驚きの声を上げた。

「ふっ、輝豸雄、俺は奇跡を起こす男と呼ばれたナイスガイだぜ。
 あれくらいの事故でくたばるわけがないじゃないか。」
「コ〜チ〜ィ〜。」
「泣くな、輝豸雄! まずはお前の友達を救うんだ!」
「でも、でも、せっかく見つけた宇宙船も、足が届かないんです。
 急に足なんて伸ばせませんっ。」
「足が伸ばせないのなら、宇宙船を小さくすればいいじゃないか。
 みんなで、宇宙船を作り直すんだ!」

「それは、無理ですよ。」

輝豸雄達のやりとりを聴いていた博士が言った。

「今からこの宇宙船を小さくするなんて、無理ですよ。
 僕は、宇宙工学については専門家だが、宇宙船やロボットにはそれほど詳しくないんだ。
 短時間で作り直すには、余程優れたロボット工学の専門家がいないとだめですよ。」
「輝豸雄ならできますよ。
 なにしろコイツは、あの ” 連邦の白いヤツ ” を設計したんですからね。」
「えっ、、、。れ、連邦の、、、白い、、ヤ、、ツ、、を?
 輝豸雄君、君たちはいったい、、、、?」
「まぁまぁ、博士、俺も手伝うから、早速作業にかかりましょうか。」
コーチの言葉を合図に、輝豸雄達の宇宙船改造作業がはじまった。

「時間がないっ! まいて行くぞッ!」
「はいっ、コーチ!」
輝豸雄達の作業は、夜通し行われた。


  

「し、信じられん、、、。こんな短時間で完成するとは、、、。」
博士が感嘆の溜息を漏らした。
「よし、このカバーを被せれば、完成だ!」

もう少しで、宇宙に行ける、行って麝弐猪を助けられる、輝豸雄の心は弾んでいた。



その時、
倉庫のラジオが、臨時ニュースを伝えてきた。

”臨時ニュースをお伝えします。
 臨時ニュースをお伝えします。
   先日より原因不明の事故によって通信が途絶えていた気象観測実験衛星が
   先程、南太平洋上に墜落した模様です。
 繰返します。
   先日より原因不明の事故によって通信が途絶えていた気象観測実験衛星が
   先程、南太平洋上に墜落した模様です。”

誰もが、言葉を失った。

「嘘だ。嘘に決まってる。なにかの間違いだ」
輝豸雄の叫びは、声にならなかった。

                                                   第98回に続く