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第94回  工房の OLD & NEW

   議論は何時果てるともなく続いていた。
   その議論が、
   何時始まったのか、
   或いは
   何時終わるのか、知っている者はいなかった。

 今、壇上で熱弁を振るっている輝豸雄にしても、
 自分が何時から此処で話し続けているのか
 当の昔に忘れてしまっていた。

「ですから、ここに掲げた資料を見てください。
 一目瞭然です。」

  後の方から声がする。

「よく見えないぞ。」

  かまわず、輝豸雄は話し続けた。

「左上が、最新のもの、
 右下が、一番古いものです。
 古くからの言伝え通り、やはり新しい物に勝る物はないと言うのが
 私の結論です。」

「そっちの件は判った。
 もう一方はどう説明するんだっ!」
 
  野次が飛ぶ。

「その件は、既に語り尽くされています。
 あえて、此処で議論する話では無い様に思われます。」

  自分でも少し乱暴だなぁ と思いながら、輝豸雄は議論を打ち切った。


   

  ” 畳と女房は新しいのに限る ” 

 本当にそうなのか、輝豸雄達の議論は終わる気配を見せなかった。

                                                   第95回に続く