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第31回  工房の DRIVE A GO! GO!

パァーン!プッッ!
パラッ パラッ
背後から、下品なクラクションを聴いた時、
輝豸雄の脳裏に一瞬だが、「嫌な」想いが過った。。

「キキィっ〜! キッ」  車が止まったようだ。
輝豸雄は、訳も判らずに走り出したい衝動に駆られた。
野生の勘が危機を告げる。

て〜ちゃん、こんなところで何しとるの?

  

ちょうど善かったがね。
 今、て〜ちゃんのとこに行こうと思っとたんよ。
 元気にしとったかね。
 お腹は空いとらんかね。
 好きな娘は出来たかね。
 お向いのしーちゃんとこに、こないだ女の子が出来たがね。
 しーちゃんによく似て、でりゃぁ別嬪さんだがね。
 今日は忙しかったで、お土産は無しだがね。
 カゴメのソースも美味しいがね。
 今年の中日は優勝決定だがね。大塚がいいがね。
 そうそう、小母さんち、車替えたんよ。
 ず〜っとTOYOTAだったけど、伯父さん会社辞めたから、
 思い切って外車にしたんよ。
 家の方じゃ、あんまり雨は降らんで、屋根無しにしたんだわ。
 風がよう当たって、気持ちいいがね。
 外車だで、ハンドルが左に付いとるのが好かんけど、まぁ、外車だで仕方ないわ。
 んじゃ、小母さん、買い物があるんで行くけど、
 はよ、いい娘見つけなあかんよ。


パァーン!プッッ!
けたたましいクラクションと共に、倶馬美小母さんは帰っていった。

「おばさん、、、、。」
遥か遠くに行ってしまった小母さんの車を見ながら、輝豸雄は呟いた。
「確かに大塚はいいけど、まだ12試合しかしてないがね、、、。」
ペナントレースは長い! 気を引き締める輝豸雄だった。
                                                   第32回に続く