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第90回  工房の ロケットのある風景  〜見上げてごらん、夜の星を〜


「なぁ、輝豸雄ォ?」
「ん? なんだい。」
「俺たちのロケットは、麝弐猪に届いたんだろうか?」
「うんうん?」
「何言ってるんだよ、届いたに決まってるじゃないか。」
「そうかなぁ。届いたのかなぁ。」
「そうそう。」
「届いたさ。」
「うんうん。」
「そうだよなぁ。あんなに一生懸命造ったんだもんなぁ。」
「そうさ、届いたに決まっているさ。」





     




その夜も、雲一つない空が輝豸雄達を包んでいた。



「なぁ、本当にこっちなのか〜」
「ちょっと待ってね。北極星があっちで、
 ここが此処で、アソコがあっちだから、、、、。」
「そうそう。」
「うん、そっちでいいみたい。」
「本当にこんな古っちい望遠鏡で見えるのかぁ?」
「うんうん。」
「何言ってんだい。その望遠鏡は御祖父ちゃんのお爺さんの従兄弟が作った
 由緒正しい望遠鏡なんだぞ!」
「それって、古いってことだろ。」
「そうそう。」




「でもさぁ、なんで麝弐猪のやつ、今、人工衛星なんかに住んでるんだ?」
「だからぁ、あいつのオヤジ、
 宇宙開発公団で人口降雪の研究してるんだよ。
 今度の実験は10年くらいかかるから、親子一緒に暮らしながらやるんだってさ。」
「よくわかんね〜。」
「うんうん。」
「そういえば、アイツ、雪好きだったもんなぁ。」
「そうそう。」
「今頃 アイツもこっちも見てるのかなぁ、空の上から。」



満天の星々が輝豸雄達3人を見守っているかの様に輝いていた。

                                                   第91回に続く