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第77回  工房の 「好き」 ということ


  「輝豸雄っ、輝豸雄ったら。」
   「う?」
  「もう 寝ようよぉ〜」
   「う〜、まだ。  今いいところなんだよ。もう少しで7面クリアなんだよ。」
  「もう、輝豸雄ったら、ゲームばっかりでさぁ〜。 ねぇ、寝ようよぅ〜。」
   「もう、ちょっとだから。  
    おっと、この土管に入ってコインを取って、と。」
  「輝豸雄の、、、莫迦、、、。」




   


   「おっと、あっと、、う!、、、、。だめだ〜! またクリア出来なかったなぁ〜。
   ん? やけに静かになったなぁ、お〜い、もう寝たのか〜ぃ?」

    寝室から、返事は無かった。

   「なんだよ、もう寝ちゃったのか。 じゃぁ、もう一回挑戦だ!」



 輝豸雄と彼女の交際は、長くは続かなかった。
 輝豸雄も、そして 彼女も、まだ若過ぎたのだ。





「彼女の事を思いやる心を持つには、
 少しだけ、時間と経験が足りなかったんだろうなぁ、、、。」 
 輝豸雄は、ふと そう想うことがある。

「あんなに好きだったのに。」

                                                   第78回に続く