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第25回  工房の 戦争を知らない子供たち

学期末を控えて、輝豸雄たちの学校も大掃除が始まっていた。

学年主任の先生から輝豸雄達3人は、
体育館裏の「倉庫」の掃除を任されていた。

   「これってさぁ〜、一体何なんだろうねぇ?」
「今にも動きそうだよねぇ」
「お前知らないのかよォ、
 コイツはモゲルスーツっていって、
 空を飛んだり、怪獣相手に斗ったりするんだぞ!」
「うそつけ〜!」
「うそじゃねえヨ。本当だぜっ」
「だって、怪獣なんていないじゃん。」
「そうだよぉ、いないじゃん」
「動かないって。ぜ〜ったい動かないよ〜だぁ」
「昔は動いたんだよ。」
「?本当?」
「家の爺ちゃんが子供の頃には
こういうモゲルスーツがいっぱいあって、
みんなこれに乗って会社に行ったりしたんだって。」
「うそだぁ、きっとうそ。」
「うそじゃねえって。本当だって。」
「うそうそ。」
「そうそう。」
「うそじゃないもん。うそじゃないもん。」
「じゃあさぁ、先生に聞いてみようよ。
先生ならきっと知ってるよ」
「あぁいいよぉ。絶対本当だもん」
「じゃあさぁ、もしうそだったらど〜するぅ?」
「うそじゃないなら、いのち賭けてよ。」
「うっ。」
「いのち賭けてよ」
「賭けてよォ」
「い〜よぉ、いのち賭けてやるよ。」
「本当だな。」
「本当だ〜なぁ。」

そこに、掃除の進行具合を確認にする為に、学年主任の先生が倉庫に入ってきた。
「先生〜、おしえて〜下さい。」
「この大きな人形みたいなの、一体なんですかぁ?」
「動いたりしませんよねぇ?」
「昔は動いてたんだよねっ、こいつに乗って会社に行ったんだよねっ。」

「なんだぁ、お前たち、そんな事も知らんのか!
 もちっとしっかり勉強せいよっ!
 いいかぁ、よ〜く聞けよ。
 まず、右の緑の機体だが、こいつは型式番号「MS−06F」 通称ザクU
 0077年に生産が始まった「MS−06」シリーズの中でも一番多く生産された機体だ。
 「MS−06」シリーズは全部で5000機弱生産されているが、この「F」型は
 3000機以上も生産されているんだ。特筆すべきは、この「F」型から採用されたジェネレーターで、
 MYFG-M-ES系だったんだ。M&Y社とZEONIC社の共同開発によって生まれたこの新型ジェネレーターは
 以後のジオン公国のMSの主流になっていくんだ。」
「うっ、、せ、せんせい〜」
「特に気をつけなくちゃいかんのは、パッと観ただけでは、「F」型と「J」型との区別がつきにくいかも知れないが
 各部に配置されたハードポイントの仕様によってはっきりと区別する事が出来るんだ。
 特徴的な頭部ユニットには光学メーカーのグラモニカ社製のユニットが使われているし、
 センサーは、なんとっ!あの、フェリペ社製なんだ。フェリペ社は後にアナハイム・エレクトロニクス社の傘下に入って
 今でも、ビデオカメラなんか作ってるよな。」
「あのゥ〜、そのぅ〜」
「まあ聞け。そもそもこういったモビルスーツが開発さ・・・・・・・・・

先生の話は、いつ果てることなく続いていた。
輝豸雄は、ちょっとだけ楽しかったが、やっぱり早く家に帰りたかった

                                                   第26回に続く