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第18回  工房のデリバリー

工房に来る前の輝豸雄の事を知っている人は
其れほど多くない。
むしろ、少ないと言っても良いだろう。

輝豸雄がピッツァのデリバリーの仕事をしていたのは、
それ程長い時期ではなかった。

   

ピッツァの配達の仕事は楽しかった。
火が危ないから、云う理由で厨房には入れてもらえなかったが
(勿論、輝豸雄はそんな事気にしていないが、)
リンリンと電話が鳴る活気或る職場は好きだったし、何より、「配達」は楽しかった。

ただ、免許の無い輝豸雄はバイクでは配達させて貰えなかったので、
30分以内に到着する事が出来なかった。
自転車では坂道がきつかったし、
押しボタン式の信号は何かと変わるのに時間がかかったのだ。

                                                   第19回に続く