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第58回  工房の その後の 夏休みの自由研究

夏休みは、立ち止まってくれない。
光の速さで移動していると言っても、過言ではないだろう。

既に、輝豸雄たちに夏休みは無かった。
夏休みの友 も、算数のドリルも、
読書感想文も、絵日記も総てやり終えた輝豸雄だったが、
最後に、自由研究が残ってしまっていた。

「だいたい、アイツが観察日記なんてやるからいけないんだよなぁ〜」
輝豸雄は一人愚痴を言う。
「調子に乗って、俺も観察日記にしようと思ったのがいけなかったんだよな、うん。」
輝豸雄の愚痴は続く。
「だいたいさぁ、観察日記って云ったって、
 何を観察するかによって、随分違うしなぁ。」

「カブトムシは、この夏中、ず〜っと、スイカ食べていただけだし、
 ディスカスは泳いでいただけだし、
 インコは、ピーチクパーチク鳴いていただけだもんなぁ〜。はぁぁ。」

「シマリスなんて、向日葵の種食べていただけだし、
 向日葵の種を、一日○○個づつ食べました! なんて観察でもなんでもないしなぁ」

「アホロートルは、この夏休み中ず〜っと寝ていたもんな。」

「このアロワナは、、、、、おっと、ワシントン条約違反で飼っているから、公に出来ないしなぁ、、、はぁ」


     

「はぁ、このまま ずっと、夏休みだったらいいのになぁ。」
輝豸雄は心からそう願っていた。

                                                   第59回に続く