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第59回  工房の 風はその背に、たてがみに


   

その人は、とても清んだ瞳をしていた。
とても穏やかな声で、輝豸雄に優しく話し掛けた。

 少年よ。時にはそれが如何に大きな壁であっても、
 自分自身が如何に小さき存在であっても、
 決して諦めてはならない。

 時には、皆から嘲笑れ、蔑まれる事もあろう。
 しかし、少年よ。
 それが自分の選んだ道で或るのならば、
 決して、悔やんではいけない。そして、振り返ってはいけない。
 己の道は、前にしかないのだ。

 自分を信じよ。
 そして、自分が信じた道を信じよ。
 決して、自分を諦めるな、その2本の足で、大地を踏みしめるのだ。
 少年よ。



大きな風車に向かい駆けて行く、その人の姿を
輝豸雄はいつまでも見つめていた。

                                                   第60回に続く