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第45回  工房の 携帯するは我に在り

ついに、輝豸雄も携帯電話を携帯する事と為った。
来期から始まるプロジェクトの中枢を担う事に為った輝豸雄に
自由な時間など無くなったのだ。

元来、輝豸雄は時間にルーズな性格ではない。
集合時間にの5分前には必ず現れていたし、
雨が降りそうだと思えば、傘を持って歩く事も疎まなかった。

しかし、時代が輝豸雄に携帯電話を携帯させた。
止む事の無い呼び鈴は、
輝豸雄を、自分が、世界中から必要にされていると思わせた。
心地よい疲労の中に、輝豸雄はかつて無い充実感を味わっていた。


     

「こんな事なら、もっと早くに持てばよかった!」 輝豸雄は本当にそう思った。

携帯電話のダイアルを廻しながら、輝豸雄の心は弾んでいた。

                                                   第46回に続く