臨床検査技師って、知ってますかぁ? −医学教育を受けずに業界に入っちゃった後輩へ− (1)


(1999/12/19掲載)


 以下の文章は、とある臨床検査機器の測定意義、測定原理、データの読みかたについて、おもに工場に配属された工業高校卒の新人さんたちのために説明した小冊子の一部です。というか、異動になってデータの読みかたの章だけ日の目を見なかったんですね。1993年に手を入れて以来なにもしていません。内容的には、「臨床検査技師の仕事」とほとんど同じですが、トーンはだいぶ柔らかくなっています。
 ちなみに、なぜ検査項目の説明で技師のことを取り上げたかというと・・・悪い先輩に染められる前に、洗脳しようという魂胆なのでした。おかげさまで、少しは効果があったように思います。




臨床検査技師って知ってますかぁ? 

  一般には、臨床検査技師は「検査をする人」と考えられています。たしかにそうです。でも、病気の原因も研究するし、そのために病理解剖(病気で亡くなった人の死因や病因、病態を究明するために行う解剖)を手伝うこともあります(実際に解剖するのは医師です)。さて、臨床検査技師の役割はなんでしょうか?
 正解をまとめてみます。

 臨床検査技師の仕事は、信頼性の高い検査データを迅速に医師に提供することである。そのために臨床検査技師は最低限、検査の臨床意義、正常・異常値、測定法(測定装置の使用法、保守法を含む)、検体の採取・輸送・保存についての知識を持っていなくてはならない。

 臨床検査技師の固有の業務は、法律で示されている微生物学的検査、血液学的検査病理学的検査、寄生虫学的検査、生化学的検査および政令で定める生理学的検査である。なお、固有の業務ではないし、きわめて限られた条件の下においてのみだが、検査のための採血も行える。


  臨床検査技師の仕事は、医師から依頼された検査を正確・迅速にこなし報告することで、その内容は法律と政令で定められている、というわけです。
 検査技師の業務のところ、微生物学がはじめに書いてあることに注目して下さい。生化学検査はつけたしのように最後に書いてあります。これは、臨床検査発達の歴史に大いに関係あることなのです。詳しくはあとで話しますが、かつて伝染病が猛威をふるっていたころのなごりです。そして現在でも、微生物の研究や検査は非常に重要なのです。


  うーん、みんなピンとこないようですね。じゃあ、なんのために検査するか思い出してください。

臨床検査の目的は

信頼性の高い患者の生体情報を迅速に臨床医に提供すること
により、患者の疾患の診断と治療に寄与すること

日常診療における臨床検査の目的
  1. 確定診断(推定された疾患の確認と、程度の判定)
  2. 鑑別診断(他の可能性ある疾患の除外)
  3. 頻度の高い合併症のチェック


  医師が検査を依頼するのは、診断や治療のために正確な患者情報が迅速に必要だからです。臨床検査技師は、診断や治療に必要な検査結果を正確・迅速に医師に報告するのが仕事です。



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