お小遣いの使い道

■ペンネーム「黒木 燐」さんからの投稿(1/2)です。(→ 黒木 燐さんのウェブサイト「Heaven or Hell?」

 ■無い職商法
 
 これはもう数年前の話です。しかし、悪マニで未だにそのテの相談があるのでまだ引っかかる方がいるということで、書くことにしました。
 ただ、時が経った話なので、電話の内容をきっちり書くことはできません。それで、大体の経過をリアリティを持たせながら書いてみます。
 なお、会社名はだいたい覚えてますが、名前はいろいろ変えて悪さをするからあまり意味は無い(特に下請け業者)ので、伏字にします。
 
 当時、私は入った会社の給料が以前より落ち込んで(前の会社が倒産し、やっとの思いで再就職したのです。)、かなり生活が苦しくなっており、うっかりメールマガジンで紹介された内職業者に「資料請求」をしてしまいました。その後数日して電話がありました。
 
業者 (若そうな男、以下エス):「●●●の▲▲と申しますが、黒木さんのおたくですか?」
私 :はい、そうですが。
エス :「燐さんおられますか?」
私 :私ですけれど。
エス :「SOHOのお仕事について資料請求されましたので、お電話さしあげているのですが。」
私 :(まだ疑いも無く好意的)はいはい、お世話になります。
エス :「私どものシステムは、勉強しながらお仕事をしていただくということになってまして。」
私 :(ふむふむ)はい。
エス :「お仕事の内容は、HP製作やエクセルをつかったデータ入力などそれぞれにやりやすいお仕事を選んでいただけます。黒木さんはHP製作は出来ますか?」
私 :いいえ、無料HPサイトやプロバイダーのものを使って作ったことはありますが、自力で作ったことは・・・。もうCGIとかさっぱりで・・・。
エス :「私共のシステムでは、そういうことを勉強しながらお仕事ができるんです。」
私 :(ほうほう)へぇ〜、すごいですね。
 
(この間しばらくいろいろ雑談になるが、たいしたことではないので省略。どうして資料請求をしたのかとか、今の自分の状況とか話した。相手も楽勝と思ったのか、オバサン相手によくしゃべってくれた。)
 
エス :「それでですね、業務のやり方ですが、教材のCDを送りますので、それを順番に勉強してもらいます。」
私 :はぁ。
エス :「各自のペースでよいのですが、それで自信がついたらステップアップ試験を受けてもらいます。」
私 :試験ですか。
エス :「真面目に勉強してれば簡単な試験です。もちろんそれは私どものサイトにログインしてからお受けになりますので、試験会場に行くようなことはありません。」
私 :へえ、便利ですね。
エス :「だいたい月3万から5万は収入を得られるようになります。その後、2年くらいでお仕事を任せられるようになったら、大手の会社にSOHOとして紹介いたしますので、収入も増えるしSOHOだけでも生活できるようになります。」
私 :へえ、すごいですね(といいながら、なんか面倒だなと思い始める。自慢じゃないが私は学校とか縛りが無い限りは興味がない勉強はまずしないタイプ。ってホント自慢出来ねーよ。)
エス :「そのために49万(詳しい金額は忘れたがだいたいこれくらい)で、教材CDのセットをを買っていただきます。」
私 :(しえ〜、そうキタか)え? ソフト買うんですか?
エス :「そういうシステムですので。でも考えてください。月3万収入があるとして2年で72万、充分元がとれますよ。」
私 :それでなくてもビンボなのに49万も払えませんよ。
エス :「ローンでも払えますよ。」
私 :(ローンなんか組んだらもっとふんだくられるじゃないか)考えてみますから、とりあえず資料を送ってください。
 
 妹が長電話にキレかかったのでとりあえず電話を切ることにしました。
 
 数日後資料が送られてきました。契約書類も入っているし、いちおうクーリングオフの説明も書いてあります。小奇麗なパンフと一緒に何故か小汚いコピーの資料もついていました。もったいない話ですが、今見たら多分突っ込みどころ満載のその資料は棄ててしまいました。ネタに出来たのに返す返すも残念です。ああ、もったいない。
 
  資料が届いたその日、待っていたように電話がかかってきました。
 
エス :「●●●の▲▲ですが、燐さんおられますか?」
私 :はい、私です。
エス :「資料は届きましたでしょうか?」
私 :あ、届いてますよ。
エス :「いかがでしょうか? 燐さんにとってもステップアップになりますし、良いお話かと・・・。」
私 :そうねえ、でもやっぱ49万は高いし・・・。
 
(といいつつまた雑談モードになる。ってゆか、オバちゃん暇つぶしに話題をそらしまくってあげる。電話はあいて持ちだしwww)
 
エス :「それで、どうされますか?」
 そろそろ痺れを切らしたらしい。
エス :「いい話だと思うのですが。」
私 :う〜ん、いい話です・・・。
エス :「そうでしょう?」
私 :即、申し込んだかもしれませんね、もし私にお金があったら!
エス :(なんかムッとしたらしい)「わかりました。では、失礼しま〜す。」
 
 口調が一変して小ばかにしたような感じになったけど、思ったよりあっさりと電話を切られてしまいました。
 
 そもそも49万払える金があったら副業なんて考えません。
 
 それから、半年も経ったでしょうか・・・。ある日会社から帰ると妹が
「おねーちゃん、■■■ってとこから電話があったよ。また電話するって。」
 ■■■?(福岡の某テレビ局と同じ名前)投稿した覚えも何かの募集に応募した覚えもないのだけど?
 しばらくすると、電話がかかってきました。
 
業者のおねーサン(以下エフ って、福岡人には業者名わかっちゃうな)「■■■の@@と申しますが黒木さんのお宅でしょうか?」
私 :はい。
エフ :「燐さん帰ってこられてますでしょうか?」
私 :私ですけど。
エフ :「以前内職の資料請求をされたので、お電話差し上げているのですが。」
私 :(あれ? 資料請求って1箇所でしかしてないけど、と思いつつ)ああ、びっくりした。テレビ局からなんの用かと。
エフ :「福岡に同名のテレビ局があるらしいですね。以前も言われました。」
私 :そうでしょう。驚きますよ。
エフ :「(笑いながら)SOHOってご存知ですか?」
私 :Small Office Home Officeの略で、自宅で仕事を請け負う形態ですよね。
エフ :「そうです。その仕事のご案内です。お願いする仕事の内容は、ある辞書を電子化するに当たって、こちらがファクスでお送りしたものを、ベタ打ちしていただく単純な作業です。その後、それが終了したらまた他の業務を紹介いたします。」
私 :そうですか。ベタ打ちなら出来そうですね。一日のノルマの文字数はどれくらいですか?
エフ :「そうですね、最初は2千字くらいですから、慣れた方にはたいした量じゃないかとおもいます。」
私 :(確かに会社から帰ってからでも出来そうだ)それくらいですか。
エフ :「難しい業務じゃありません。」
 
 この間ちょっと雑談するが、夕食が遅くなると妹が怒りはじめたので、自室のFAX付き電話番号を教え、そこ資料を送ってもらうこととし、電話を切る。  食事を終え、自室に戻るとしっかりファクスが届いていた。会社名はアルファベットではなくカタカナだった。指定した時間になると早速電話が鳴る。
 
エフ :「ファクス見ていただけましたか?」
私 :はいはい。これなら難なく出来そうですね。
エフ :「そうでしょう。それでですね。うちのシステムでは、毎月サイトにログインしてステップアップ試験をしてもらうことになっておりまして。」
私 :(げ、どっかで聞いたような・・・)え? そうなんですか?
エフ :「最初はお仕事に慣れていただくために簡単な作業から始まります。ステップアップするともっと複雑な業務が入るようになって、収入も増えますから。」
私 :(警戒モードに入りながら)増えるんですか。
エフ :「はい、増えますよ〜。最初でも3万の収入が入ります。ですからその支援システムを受けてもらう形としてそれから毎月1万5千円を払っていただくことになります。
私 :(ハァ? 3万から1万5千円払ったら後は1万5千円じゃん。私の交通費の半額負担が補える程度じゃん。)お金が要るんですか?
エフ :でも毎月1万5千円でステップアップシステムを受けることが出来て、スキルアップできるんですよ。安いでしょ。それにその上1万5千円のお小遣いが出来るんですよ。1万5千円あったら何に使いますか〜?
私 :(小学生にお年玉の使い道を聞いてるのかよ^^;)はあ、何に使いましょうかねえ。ところで、質問なんですが、確実に3万稼げるんですか? もし1万5千円しか仕事が出来なかったら、こちらにはお金は入って来ませんよね。で、もし、1万5千円以下、最悪仕事が出来ない月とかあったらその分払わないといけないんじゃないですか?
エフ :そうですね、そういうことになりますが、黒木さんなら絶対大丈夫ですよ!」
私 :(その確証はいったいドコから)それにこれから会社も残業が続きますし、実際出来ない状態もありうるんです。
エス :「大丈夫ですよ。ですからね燐さん、1万5千円あったら何に使いますか?
 
 天然なのかそういう戦法なのか人生舐めているのか、しばらくこのパターンが続きました。
 2年間1万5千円払うということは、36万ドブに棄てることです。貯金したほうが何ぼもマシでしょう。
 しかし、なんとなくこのオネエちゃんになんとなく情が移ってしまい、強い突っ込みの出来ないワタクシ。とりあえず、遅いのでまた明日10時過ぎに部屋に電話してください、こっちの電話以外には電話しないで下さい、家族はもう寝てるので(大嘘、ただし、たまにテレビを見ながら私を含め家族でうたたねしていることあり。)、といって電話を切りました。
 
 ところが、翌日から残業が続き帰りが10時過ぎの日が続きました。何度か留守電に彼女からのメッセージが入っていたけど、諦めたのか3度でかかってこなくなりました。
 今、彼女はどうしているでしょうか。出来ることなら、あんな阿漕な職場からは足を洗い、フツーの会社に勤めていてほしいと思います。
 
 因みに、両方とも ここ 繋がり。
 
 http://kuroki-rin.cocolog-nifty.com/heaven_or_hell/2006/06/post_7c2a.html

■黒木 燐さんから、二回目の投稿です。ご自身のブログで公開されている記事を、広く情報提供ということで当サイトに投稿して下さいました。力作をありがとうございます!
 詳しくは、黒木 燐さんのブログ「Heaven or Hell? 無い職商法(内職商法)」をご覧ください。そのエントリにて、内職商法についての説明も記しておられます。
 一部を引用させていただきますと・・・、

* 人を雇うのに資料請求させるようなマトモな会社はない。
* 仕事をさせるのにカネを取るような業者はマトモではない。
* SOHOは余暇で仕事をして楽に儲かるような甘いモノではない。
* 仕事が向こうから歩いて来る事は無い。

 ・・・もう、これだけで内職商法の本質がズバリと言い当てられてしまっていますので、私が付け加えるべき事は何も無い(笑)のですが、そこはそれ、あまりに手を抜くのもどうかと思いますので、ここは少し視点を変えて「お小遣いの使い道作戦」について少し物してみます。
 
「うどん100円」の「100」と「円」の間に、虫眼鏡で見ないと判らない「万」の字が入ってあって、「さあ、100万円払え」・・・みたいな詐欺ならともかく(長い前置きでスミマセン)、内職商法は限りなく詐欺に近いけれども、被害者が被害を認識しにくい事の多い商法です。
 
 教材などの出費が必要である、ということは判っていたわけだし、
 収入が無いのは私の力不足のせいなのだろうし、
 ・・・といった風に、お得な契約だと勘違いした自分が悪かったのだからと、加害者の説明責任が被害者の落ち度にすり替わってしまいがちなんです。
 
 その、お得な話だと勘違いさせるための作戦の一つが、「お小遣いの使い道作戦」です。
 
 これは、まさしく黒木 燐さんが受けた体験そのままで、「○○円の収入がある」と断定し、その金額の使い道を考えさせる、というものです。
 
「宝クジは、買った後に当選発表まで夢想にふけるのが楽しいの!」という人は少なくないでしょうが、それと同じ事です。
 ましてや、内職商法の場合は、その収入が一見保証されているかのように思わされるため、夢想の楽しさは宝クジの比ではありません。家計にあてるか、貯金するか、いやいや、私が頑張って稼いだ「お小遣い」だもんね、たまにはアレを買って、コレも買って・・・・・・
 
 そういった夢想(妄想?)に耽れば耽るほど、冷静な算盤は鈍ります。
 水が低いところに流れていくように、人間はどうしても楽な方楽な方に物事を進めてしまいがちです。「○○円よりも収入が少なかったらマイナス収支」だの「最初に払った金額を稼ぐまではタダ働き」だの「そもそも内職の筈なのにイキナリ借金ってどうよ?」といった疑問を考えるよりも、未来に手に入る筈の金額について思いを巡らせてしまうのは、至極当然の事でしょう。
 
 それで、一度でも「契約したい!」と考えてしまうと、今度は「契約する為の理由」ばかりを探し始めますからね。「契約しない為の理由」は頭の奥底にしまいこまれてしまうというわけです。
 
 本当に、侮りがたし! 内職商法業者!!
 
■さて、黒木 燐さんの投稿がボリュームたっぷりだったので、ネタごとに二つのページに分けさせていただきました。後半部分の「(株)新日本総合管理」へどうぞ。

(2006.12.12)
(参考)
この他の、黒木 燐さんの投稿は以下の通りです。
地域の平和は俺達が守る!
エアコンの掃除の正体は・・・
(株)新日本総合管理