『ノスタルジア』録音日記


8月18日(水) 晴れのち曇り

 いよいよ今日から新しいCDのレコーディングがスタートする。今回はまず大阪で6日間、2週間ほど空けて、9月には東京で1週間予定されている。
 大阪の録音は、吹田のスタジオをはじめて使用する。機材や設備は充実しているスタジオとして定評があるが、レコーディングブースがひとつしかないのが難点で、少々苦労しそうだ。
 ディレクターの原澤氏とエンジニアの佐藤氏の両名はすでに昨日大阪に入り、昨夜は打ち合わせを兼ねて全員で一杯飲った。
 12時にスタジオ入りし、セッティングを始める。12時半頃からマリオネットの二人も揃ってスタジオ入り。1時にはパーカッションの山村誠一氏スタジオ入り。ベースの岩田晶氏を待つ間に3人でリハーサル開始。まずは「沖縄センチメンタル」から。年頭に沖縄へライブに行った際のイメージを基に吉田が作曲した曲で、最近のライブの定番でもある。
 そうこうしても、岩田氏が到着しない。自宅に電話を入れて確認したところ、どうもスタジオを間違えて大阪市内に出てしまったようだ。彼は携帯電話を持っていないので、こちらからは連絡が取れず、彼の連絡待ちとなる。初日からとんだトラブルとなった。しかたなく、岩田氏抜きで録音を開始する。ベースがないためなかなかパーカッションとマリオネットの乗りが合わず、吉田抜きでまずはベーシックを録音することとなった。比較的早く終了し、続けて吉田のマンドリンを重ねる。ゆったりしたテンポにややてこずるが、3時40分頃終了。終了間際、ようやく岩田氏スタジオ入り。やっと全員揃った。
 続けて「花の葬列」を開始。こちらも新曲だが、最近のライブでの人気曲だ。4人全員で録音。ベースラインの検討に時間を要したが、5時終了。なかなかバンドっぽい良い録音になった。
 続けて「イベリア」の録音に入る。ラテンパッションあふれる、リズミカルな曲である。まずマリオネットだけで、全体を仮録音。続けてこの上にパーカッションとベースを重ねる。一度テスト録音してみて、細部を検討。方針が決まったところで、夕食用の弁当が届いたので、ブレークとなる。
 7時再開。細部のやりなおしなどもあったが、8時前にはベーシックの録音を終了。マリオネットのパートは、後日改めて録音することになる。
 今日最後に予定されているのは「詩人と女優(仮題)」。この曲も「イベリア」同様、マリオネットの仮録音から。続けてパーカッションとベースのパートの録音なのだが、実は全体の雰囲気の決定ができていないため、アレンジ作業で結構手間取ってしまった。特に、パーカッションにはチャンゴという韓国の打楽器を演奏してもらったのだが、このアレンジでひと苦労。最後は正体不明のノイズまで現れて、その正体探しで手間取ったが、問題なくほっとする。
 9時50分、最初に録音した「沖縄センチメンタル」にベースを重ねる作業。使用楽器の選定などで議論があったが、最終的にうまくまとまった。終了11時。
 明日も12時から録音のため、今夜は珍しく飲みにも行かずお開きとなる。

8月19日(木) 曇り時々雨

 録音2日目。 今日は、知人のカメラマン兼ライター・野寺夕子さんに録音風景の写真撮影をお願いしているため、11時40分頃にはスタジオ入りしたところ、野寺さんはすでにご到着されていた。簡単な打ち合わせなどをするうちに12時過ぎにはマリオネットもスタジオ入り。
 セッティングとリハーサルののち、12時50分、録音開始。まずは「私は知っている」から。この曲はずいぶん古い曲だ。「ぽるとがる幻想」の録音の際にも収録候補に上がり、録音まで済ませたのだが、残念ながら最終的に収録にいたらなかった。常田富士男さんとご一緒にイベントをする際のテーマ曲としてもおなじみの曲である。順調に2テイクでOKが出た。
 1時20分、続けて「東西巡礼」。今年はフランシスコ・ザビエル来日450年にあたり、湯淺がそのイメージで作曲した。
 ところで、最近、吉田は新たにマンドリュートを手に入れた。今まで使っていたものと同じジェラ製で、1年あとに作られたものだ。テストとして、二つの楽器を弾き比べて録音テストしてみる。結果としてこの曲には、従来使っていたものの方が合っているという結論となる。次に曲のサイズの問題も議論となるが、ライブと同様のフルバージョンで収録することに決定。録音は3テイク収録するも、最終的には1テイク目を採用。ベースは東京で重ねる予定。3時40分終了。
 しばし休憩ののち、4時15分、録音再開。曲は「午後の睡蓮」。ゆったりした曲。5時10分、終了。これもベースは後日録音である。
 続けて「風船のゆくえ」。この曲は、今年の成人の日に放映されたテレビドキュメンタリー「最後の桃源郷・フンザ」のテーマとして作曲した曲である。まずは二人でガイド録音の後、吉田のマンドリュート伴奏の本録音。一発でOK。湯淺のポルトガルギターは、本人の希望で後日改めての録音となる。ベースも後日の予定。
 「風船のゆくえ」録音中に、CDジャケットのデザイナーである藤本氏が、部下の高橋君と共に陣中見舞いに来てくれる。藤本氏は、マリオネットの高校時代の同級生でもある。ジャケットのデザイン案も携えて来てくれた。
 6時10分、今日の予定外であったが「月光(仮題)」の録音にかかる。テスト録音の後、吉田のマンドリュートの伴奏だけでも仕上げるつもりであったが、別々に録るよりは一緒に録音する方がよいと判断。弦のコンディションなどを考え、後日改めて録音することにして、7時過ぎ、本日は終了とする。
 このあと夕食もかねて、一同でマリオネット行き付けの寿司屋さんで打ち上げ。8時半頃にお開きとなった。

8月20日(金) 晴れ時々曇り

 今日は暑い一日になりそうである。12時にスタジオ入り。
 弦の交換や指慣らしなどの後、12時40分スタート。初日にベーシックを録音した「詩人と女優(仮題)」のオーバーダビングから。まずは湯淺のギターを重ねる作業を行う。1時50分終了。続けて吉田がマンドリンのメロディーを重ねる。メロディーの表現の問題で作曲の湯淺と演奏者の吉田の間で解釈のズレが有り、何度かテストを重ねて調整する。3時40分終了。
 次に「道2(仮題)」。もともとの原曲は、94年に吉田が作曲したもので、当時は「ドライブ・アローン」(当時は「道」というタイトルだった)と対になっていた。今回録音に当たり、サビの部分を大幅に作り変えてリニューアルしている。この曲は完全にギターとマンドリンを別々に録る予定であったが、テストの結果やはり同時に録ることで落ち着いた。ちなみに、この曲では、吉田が知人のKさんからお借りしてきたベルナベという制作家のギターを湯淺が使用した。大変ふくよかな素晴らしい音である。5時40分終了。ここで少々早いが、夕食ブレークとなる。
 6時50分再開。「働く日本人」。この曲はライブではできないタイプの曲で、録音ならでは。ギターとマンドリンをまず録音し、これにマンドリュートを加えるのだが、マンドリュートは弦の状態の関係で、後日改めて録音することとなる。
 7時40分、「守銭奴」のガイドだけでも録音を済ませようということになり、ラフ録音をする。後日、これをガイドに、ギター・マンドリンのパートをやり直す事になる。8時終了。
 マリオネットの両名は少々疲れ気味。翌日に備えて、今日はこれで解散となる。

8月21日(土) 晴れ時々曇り

 12時スタジオ入り。今回録音に使っているスタジオは、いわゆる練習スタジオも兼ねている。録音用のブース以外にも練習ブースがいくつもあり、結構人気で、はやっている。今日は土曜日ということもあり、ブースも詰まっていて、駐車場も一杯。何とか駐車できてほっとした。
 12時25分、今日は「ファドのワルツ(仮題)」から。1曲目ということもあり、最初は少々元気のありすぎる演奏だったが、徐々に本来の色気たっぷりの演奏を取り戻してきた。5テイク録音してその中からの選択となる。それぞれ表情が異なり、どれを選ぶかで迷うところであったが、結局テイク1を採用となった。そんなものである。ギターは昨日同様、ベルナベを使用。
 しばらく休憩ののち「月光(仮題)」の録音に入る。この曲は、もともとクラシックギターの練習曲(作曲/ソル)としてあったものに、湯淺がファド風のメロディーを乗せたもので、悲しく美しい曲に仕上がった。もともとのギターのパートは、吉田がマンドリュートで演奏している。CDに録音されるものとは違うバージョンが、人形劇団プークの新作「金壷親父恋達引」の中でも使われているので、早く聴きたいという人はぜひ見に行ってほしい。
 本録音の前に、湯淺がふだん使っているジルベルト・グラッシオの楽器と、グラッシオのお父さん(ジョアン・ペドロ・グラッシオ)が作ったオールドの楽器を弾き比べてのテストを行う。音の傾向が多少違うのだが、この曲には、結局いつも通りの楽器を使うことになった。本番は3テイク録音して、2テイク目が採用になった。

 さて、ここで吉田がパソコン乗っ取り! いやいや、録音も4日目ともなると疲れてくるわい。今日はポルトガルギターの濃い曲を取る日なので、私はギターとマンドリュート。湯淺君は結構粘るので、曲によっては5テイク以上とって、私は体がアリナミンVVを要求する状態になったり、ちょっとバテ気味だけど、ただいま5時現在、割と良い録音ができたようで良かった良かった。明日はディレクターの原澤氏が東京に帰るので、今晩は中締めよろしくみんなで焼肉を食べに行くことになっている。あと1曲、テイクワンでばっちり決めて、早々に食べに行こうではないですか?皆さん。では、録音に移ります。

 ということでマリオネットの両名は録音に戻った。5時20分、今日の最後は「カーヴォ・ヴェルデ(仮題)」。この曲はカヴァー曲である。実はタイトルは別にあるが、ポルトガル語で意味がわからないので、とりあえずこう呼んでいる。ラテン音楽をお好きな方は良くご存知だと思うが、カーヴォ・ヴェルデとは、大西洋に浮かぶ旧ポルトガル領の島国の名前で、今このカーヴォ・ヴェルデの音楽が静かなブームだ。セザリア・エヴォラの歌声を聴いた方もいらっしゃるだろうか。ポルトガルでもずいぶんブームになっていて、湯淺が昨年行った際に買ってきたカーヴォ・ヴェルデのオムニバスCDの中に、今回カヴァーする曲が入っていた。カーヴォ・ヴェルデの音楽は、ラテンのリズムなのにどこか物悲しい。胸がきゅんと切なくなるような、独特の世界だ。
 まずは二人で同時に録音。これをガイドとして、吉田がギターのみをやりなおし、これに、改めてポルトガルギターがメロディを入れなおすという、複雑なやり方をとった。湯淺のメロディーの解釈を二通りのテイクで録音。より悲しげな演奏を採用。ちなみに、これもギターはベルナベを使用。後日、パーカッションとベースを重ねる予定。7時30分終了。
 さて、今夜は先に吉田が書いた通り、焼肉を食べにゆこうということになっている。ところが、ディレクターの原澤氏に急用が発生し、最終の新幹線で帰京することになった。多少の時間はあるので、ホテルのチェックアウトを済ませた後、とりあえず一同、天五の行き付けの焼肉やさんへ直行。8時45分、原澤氏のみ先に退場。一同9時半頃まで舌鼓を打ち、解散となる。

8月22日(日) 晴れ

 今日はスタジオのスケジュールの都合で1時入り。1時間でも遅いと、体が多少楽だ。とはいえ、マリオネットの両名は、5日目ともなると疲れ気味。大阪でのスケジュールは余すところ今日も含めて2日。頑張ってほしい。
 今日は初日に録音した「イベリア」のオーバーダビング作業から。まずは、湯淺のギターを重ねる。苦労の末、3時15分終了。続けて吉田がマンドリュートでメロディーの録音。こちらも大いに苦労して、5時10分終了。苦労の甲斐あって、満足できる良い仕上がり、かっこいい曲です、お楽しみにお待ちください。
 ここでしばらく中休み、この間に仕上がった曲を仮ミックスダウン。ついでに軽く腹ごしらえを済ませる。
 6時30分、録音再開。一昨日ガイドを録音した「守銭奴」の本録音。この曲は、人形劇団プーク「金壷親父恋達引」のテーマ曲でもある。まずは、湯淺のギターパートから。7時、これに吉田のマンドリンを重ねる。8時終了。ベースは後日重ねることになっている。
 今日の最後は「働く日本人」のマンドリュートのオーバーダビング。一部のパートで、事前にメロディーが出来ていなかったところがあり、その部分で手間取るが、9時25分、完了。
 この後は、蛍池の魚料理の店に食事に行く。ここもマリオネットの行きつけ。土佐風の魚料理がなかなかうまい。今日のお勧めの一品はハマチのたたき。エンジニアの佐藤氏も大感激。夜中の1時過ぎまでゆっくりしてお開きとなる。

8月23日(月) 晴れのち夜時々雨

 大阪での録音は今日が最終日。12時前にはスタジオ入り。12時半過ぎに、ドラムの竹田達彦氏とベース・岩田晶氏が相次いでスタジオ入り。ドラムのマイクセッティングやリハーサルの後、1時30分、「話し合い(仮題)」録音スタート。この曲は、マリオネットの中でも最も古い曲のひとつ。92年に公開されたアニメーション映画「パッチンして!おばあちゃん」の挿入曲のひとつである。「リスボンの青い空」のように、明るく軽快なタイプの曲である。今日の目的としては、まずドラムとベースのリズムセクションを完璧に録音すること。ポルトガルギターとギターは後日東京で録音する予定だ。途中、ベースの接点不良でノイズが乗るトラブルがあったが、概ね順調に終了。続いて、シェーカーを重ねる。3時15分終了。ここで竹田氏は仕事は終わり。お疲れ様でした。
 続けて「道2(仮題)」にベースをオーバーダビングする作業。作業中4時頃、山村誠一氏スタジオ入り。ベースラインの決定に大いに手間取り、5時40分、ようやく終了。
 セッティングを変更して、ようやくお待たせの山村氏の出番。「詩人と女優(仮題)」のラスト、リット部分だけ、パーカッションを差し替え。6時30分終了。
 続けて「沖縄センチメンタル」にパーカッションをオーバーダビング。7時20分終了
 ここで食事ブレークを取る。岩田氏はここでお疲れ様。
 食事後、最後の曲「カーヴォ・ヴェルデ(仮題)」にパーカッションを重ねる。アイデアは、すべて山村氏にお任せ。基本的に雰囲気系のパーカッションを採用。寂しげな雰囲気がよく出て、いい仕上がり。9時15分終了。ベースは後日東京で重ねる予定。
 これで大阪でのすべての日程が終了。スタジオの前にある寿司屋でささやかな打ち上げ。その後、山村氏は帰宅。吉田は友人との待ち合わせで京都へ。残る3名でミナミへ繰り出して、深夜まで楽しんだのでした。
 しばらく中休みの後、9月第2週からは東京での録音・トラックダウンの作業が待っている。日記もそれまではしばらくのお休みです。

9月5日(日) 晴れ時々曇り

 皆様ご無沙汰です。
 いよいよ明日からレコーディングが再開。後半は東京で行われるため、今日は移動日。レコーディングで使用する楽器などがあるため、車での移動である。
 午後1時に大阪・豊中のマリオネットの練習スタジオに集合。荷物を積み込んで、いざ出発である。大阪〜東京間のドライブ、約7〜8時間の予定。3人で交代しながらの運転である。午後4時頃、愛知県と静岡県の県境あたりのPAで休憩、到着が遅くなることが予想されるため、蕎麦やラーメンで軽く食事とする。
 静岡も半ばを過ぎたあたりで、神奈川付近で渋滞30キロの情報。日曜日は行楽がえりの客で込んでいるようだ。時間がかかっていやだなあと思っていたら、なんと御殿場を過ぎたあたりで事故渋滞に当たってしまった。ラジオの情報によるとトラックと乗用車の衝突事故のようで、3人の怪我人が出ているらしい。大きい事故のようだ。車の事故は本当に怖い。たいした事がなければいいのだが。事故の程度はわからなかったが、結局7キロほどの渋滞を抜けるのに2時間近くかかってしまった。
 結局新宿のホテルにたどり着いたのは午後9時だった。チェックインのあと、近くの寿司屋で遅い夕食。11時頃には、各自部屋に引き上げる。明日からいよいよ再開である。

9月6日(月) 曇り時々雨

9時頃、ゆっくり起床。11時過ぎ、食事に出たついでにスタジオに下見に出かける。スタジオはホテルから歩いて5分、すぐ近くだ。挨拶と駐車場の確認をして、近くのドトールコーヒーで簡単に食事。
 ホテルに戻ったあと、12時15分頃、マリオネットの両名と出発の予定であったが、直前に湯淺から部屋に電話。急に調子が悪くなったとのこと。しばらく部屋で休んでもらうことにして、吉田と二人で先に出かける。とりあえず荷物を搬入。原澤氏、佐藤氏と約2週間ぶりの再会である。その後、車を近くの駐車場へ移動。
 スタジオに戻ると、既に録音が始まっていた。まず最初は、「午後の睡蓮」にベースを重ねる(オーバーダビング)作業から。今日は、吉田が集中的にベースのオーバーダビングを行う予定。吉田が使うベースギターは、ポルトガルのヴィオラ・バイショというギターを単純に大型化したようなアコースティックベースを意識して、特注したもの。午後1時半、無事終了。続けて「守銭奴」へのオーバーダビング。ベースラインの決定に手間取り、3時半終了。ここでしばらく休憩を取る。

 さて、ここで再び吉田がパソコン乗っ取り!!
 今日は湯淺君が調子悪いということで、東京録音は若干、幸先の悪いスタート。ところで彼は大丈夫かな。と案じつつ、録音開始したものの今日はベースの重ね。私がベースを重ねる曲は比較的簡単なものばかりであるが、あとから重ねるのは結構神経質で、少し気の重い作業。「守銭奴」のベースラインに駄目出しがあり、・・・おっと失礼。弾きに行かなくちゃ。ちょっと待ってね。 つづく

 休憩中、佐藤氏のほうで準備をしてもらい、4時過ぎ、録音再開。「月光(仮題)」へのベースのオーバーダビングへと移る。弾き方とマイクセッティングの工夫で、ずいぶん色っぽい音で録音できた。曲のイメージにぴったり、出来上がりを楽しみにしていてほしい。5時終了。
 ここで、湯淺がスタジオへ顔を出す。だいぶ良くはなったそうだが、まだ調子が悪そう。しばらく座っていたが、とりあえず相談して、今日は湯淺は休んでもらうことにする。ということで、湯淺はすぐにホテルへ引き上げる。
 5時40分、録音再開。「ファドのワルツ(仮題)」へのオーバーダビング。独特のゆれと表情にあわせるのにかなり苦労をするも、7時10分終了。

 えー、ここで再び吉田登場。
 先ほどの続きですが、「守銭奴」のベースラインに駄目出しがあり、思いのほか時間がかかってしまう。と書こうと思っていたら、そのあとの作業も同じく思いのほか時間がかかってしまった。メルドー!!とはいえ、一応本日分のノルマは達成したからまあいいか。ベースは難しいわい。明日も同じような作業が待っていると思うと嬉しい…かな?何せ、今日は湯淺先生がくたばってるから吉田先生の出番ばっかりでした。たまには目立たんとね。と、そうこうするうちに今日はおしまい。Feier-abend!終わり終わりということで、海井先生と二人で夕食と洒落込もう・・・。誰か羨ましい人おる?海井と食事に行きたい人、名乗りをあげてもらえば、交代したげるよ。
 では、皆さん。またね。

 録音終了後、佐藤氏が翌日の録音のための準備作業。8時過ぎに終了して、近くの居酒屋で一杯。10時頃打ち上げて、ホテルへ戻り湯淺に声をかけたところ、大分調子は戻っているようだ。明日も録音は続く。

9月7日(火) 晴れのち曇り時々雨

 ゆっくりと10時過ぎに起床。11時頃に湯淺の部屋へ電話を入れてみたところ、かなり調子が良くなってきたようだ。今日はスタジオに顔を出すとのこと。とりあえず一安心。
 食事に出るのも面倒なので、近くのコンビニに買い物に出る。サンドイッチと野菜ジュースを買い込み、ホテルの近くの大きなワイン屋で寝酒用のポルトガルワインを買い込んだ。
 部屋で食事を済ませて出かけようとして湯淺の部屋へ電話をしたところ不在のようだ。先に行ったかと思い、とりあえず吉田とともにスタジオに。湯淺は既に到着していて、練習中であった。弾けるかどうか不安だったので、早めに来たとのこと。夕べはアリナミンVVドリンクを3本飲んでじっとしていたそうである。
 1時10分頃から、録音開始。今日は「話し合い(仮)」のギターのオーバーダビングから。3テイクでOK。
 続けて「東西巡礼」へのベースのオーバーダビング。2時50分、これも3テイクで終了、順調である。ここでしばらくブレーク。
 3時5分、再開。「カーヴォ・ヴェルデ(仮)」へのベースのオーバーダビング。弾き方や、音質、ベースラインなどで検討があるも、4時5分、順調に終了。
 続けて「風船のゆくえ」へのベースのオーバーダビング。湯淺も、今日は出番はないのだが、だんだん元気になってきた。吉田にもいろいろな注文を出している。サビの部分のベースラインに検討を加えたが、単純なベースラインを採用。後日、湯淺がメロディーを入れたあとで再検討をすることにする。5時30分、順調に終了した。
 本日は少し早いが、これにて終了。出前で蕎麦を取り、軽く夕食ののち、マリオネット・佐藤氏と4名で、近くのプーク人形劇場へと向かう。現在、プークの芝居「金壷親父恋達引」が上演中(マリオネットが音楽を担当/8日千秋楽、この後上演の予定がないので、このチャンスにぜひご覧ください)で、これを観劇のためである。終演後、楽屋を訪ね、劇団の方々と打ち上げで歓談。楽しいひとときを過ごす。
  10時半頃お開きとなり佐藤氏とはここで別れ、近くの焼鳥屋で一杯。12時半頃ホテルへと引き上げる。

9月8日(水) 晴れ

 さて、またまたここで吉田乱入! おーっと!流血だあ! コーナーポストにぶち当たった海井の額から鮮血がどくどくと…んなわきゃないわな。海井はともかく、僕はプロレスごっこは嫌いなんだけどね。阿呆なことはおいといて、僕の音入れは昨日でめでたくお仕舞い。このあとはトラックダウンが中心だけど、今日はまず湯淺の残った2曲の音入れから始まるんで、ま、いづれにせよ僕に関して言えば、後はソファに座ってああだこうだ言っておれば良いということなので、やれやれ。リラックスしてます。
 ところで昨日の晩は海井先生のおっしゃる通り、すぐ近くのプーク人形劇場へ「金壷 ―」の出来映えを拝見しに行ったのであるよ。やっぱ、自分達の音楽なんで、なかなか客観的には見れへんけど、まあ皆楽しく見せてもらいました。どうでもええけど言葉遣いめちゃくちゃやね。では、またお会いしましょう。

 さてここで、プロレス大好き・海井が本日初めての登場であります。
 今日は1時までに各自スタジオ入りすれば良い。午前中は各自部屋でゆっくりしていることだろう。ゆっくり起床して部屋でいくつかの事務連絡などをしていると、隣の湯淺の部屋からかすかにポルトガルギターの音が聞こえて来た。今日はいよいよ湯淺の録音日、少し緊張しているのだろうか。
 12時過ぎに部屋を出て、途中軽く昼食を取った後、12時40分頃スタジオ入り。湯淺は既にブースで練習している。三々五々、皆が集まってくる。湯淺は、どうも昨日のほうが調子が良かったようだ。大丈夫だろうか。とりあえず本人のリクエストで、アリナミンVVを買出しに行く。
 1時15分、「風船のゆくえ」のメロディー録音からスタート。体調のせいか、最初は今一つ精彩に欠ける感じだったが、テイクを重ねるごとに表現が向上してきた。いけそうだ。4テイク目で、OK。ここで、表現を変えて、別テイクにトライ。結局もとのテイクのほうが良いということで、3時終了。

 チャンチャカチャ〜ン! はい。またまた吉田です。ブースの中では湯淺先生がねばってござるによって、私としてはなすすべもないので、皆様にサービスいたすべく再再度の登場にて候。湯淺先生はテイクを重ねる毎に元気になってくるようだ。さすがはアーティスト。自らの自己表現をエネルギー源にするとは、なかなか憎いぜっ!こうなったら褒めて褒めて褒めまくってやる。・・・と思ったもののやっぱり面倒くさいのでやめにして、私の貧しい食生活をお伝えしようかな。ホテル住まいだと外食が続くので、どうしても満足いく食事がとれないけど、昨日の昼からは最低。原則的に昼食は各自ばらばらで自由だけど、そんなに凝るわけにもいかないし、昨日の昼は24時間のカレー屋でカツカレー、夜は出前ののびのび天ぷら蕎麦。そして今日はあの吉野家だぜっ!いいかげん嫌になるよね。でもね、今日発見したんだけど吉野家の味は関西と関東で違うんやね。やっぱり関東は塩辛いわ。牛丼もそうやし、お新香がまた塩っ辛いんやわ。でも味噌汁は関西と一緒やね。大体、前から塩辛いと思ってたから。でもあんまり混ぜずに上澄みだけ飲んでる分には許せるかな。・・・なんて下世話ですな。お里が知れるっちゅー話やね。今回はここまで。

 今日の吉田君は暇を持て余しているようですね。ちゃんと人の演奏も聴けよー。
 ということで、しばらく休憩ののち、3時30分、今回のレコーディング最後の曲となった「話し合い(仮)」のメロディー録音に入る。リズムのある曲なので、曲頭のノリをつかまえるのが結構大変。何度かテイクを重ねてノリをつかまえ、本番。
 ところで、最初は真剣に聴いていた吉田君、おいおい、こっくりこっくり舟をこぎ始めましたねー。お疲れでっか?
 その間も湯淺君、孤独な録音を続け、4時半、OKテイク完成。これでようやくすべての録音が終わった・・・はずである。何事もなければ・・・。 ここからは、トラックダウンの作業である。まずは「私は知っている」の作業から。
 途中5時半頃、ジュンアンドケイの越中女史が夕食の差し入れ。ボリュームたっぷりの中華弁当で満足。ゆっくり歓談ののち、「私は知っている」の続き、完了。リバーブのかかり具合を変えて、2テイク落とす。続けて「午後の睡蓮」。これもベースの音量のバランスで2テイク。あとで選ぶのが大変だ。今日の最後は「風船のゆくえ」。バランスや音質の決定が思いのほか厄介で時間を要した。結局終了したのは10時であった。

 しかし、それがどんな一日であれ終わりの訪れない日はないのであ〜る。本日3回目の吉田登場とともに今日の録音日記は終わり。はい、終わり終わり。

 ということで、本日終了。マリオネットと佐藤氏と共に、近くの酒場で軽く一杯。ホテルに引き上げたのは11時半頃であった。でも、今回の東京では、湯淺の体調もあるけれども、まじめなマリオネットなのである。

9月9日(木) 晴れのち曇り

 今日は猛烈に暑い一日だ。
 今日の昼食は、吉田君ご推薦の巣鴨・とげぬき地蔵のそばにある八ツ目鰻を食べさせる店へ行こうということになっている。11時前に吉田から連絡があり、店は開いているがどうするかという連絡が入る。湯淺は、大事を取ってパスするとのこと。せっかくの機会なので、もの珍しさも手伝い、吉田と共に出かけることにする。
 JR新宿駅から山手線に乗ろうとしたところ、外回りが信号の故障で止まっている。復旧の見込みがわからないので、とりあえずすし詰めの埼京線で池袋まで。ここまで来ても復旧していなかったので、しかたなくここからはタクシー。苦労の末ようやく到着した店は、とげぬき地蔵の参道の途中にあった。店頭で鰻を焼いていていい匂いだ。とりあえず、ビールと八ツ目の蒲焼ひとつと普通のうな重を注文。待つことしばらく、ようやくめぐりあった八ツ目はなかなか野性的な味。江戸時代の鰻はこんなだったのかなあと思わせるような味だった。八ツ目についての詳しくは、吉田の「うなぎのはなしあれこれ」をご覧ください。
 帰りはスムースに移動でき、12時45分にスタジオ入り。今日は昨日の続き「風船のゆくえ」から。一応昨日ダウンしているのだが、佐藤氏が秘密兵器?を持参。テストの結果、音質に改善が見られたので、採用することにする。最終的にバランスも少し変更し、トラックダウンをやりなおした。
 続けて「東西巡礼」のトラックダウンに入る。湯淺の持っているイメージを具体的に音に反映させようとしたときに、なかなか全体がうまく決まらない。いろいろと試行錯誤ののち、なかなか世界観の大きな曲になった。めでたしめでたし。

 さて皆さん、途中ですがおはようさん。吉田です。海井先生が先程のた打ち回った…じゃなくて、のたまったように、今日のお昼ご飯は八つ目鰻でした。海井と二人でやってきました恐れ入りやの鬼子母神じゃなかった、ここは巣鴨のとげぬき地蔵、別名お婆さんの原宿。本当だ、いるいる。あっちもこっちも婆さんだらけだ。えっ、そんなことはどうでもいいって?そりゃそうだ。え〜と、うなぎうなぎっと。あっ、あったあった。その名も八つ目やにしむら!なんて、本当は何回も来てるんだけどね。レポーターの真似するこたぁないやね。久々の八つ目は、相変わらずの野趣で五臓六腑に染み渡ったであるよ。いっぺん皆も食べに行ってきたら?おいしいよ。ではまた。

 続けて、同じ編成の曲「月光(仮)」。ポルトガルギターとマンドリュートのバランスで、曲の表情が大きく変わる。非常にシビアな選択だ。だいたい3つのパターンから聴き比べ、大いに悩んだ末、決定。なお、この曲の正式タイトルは「ノスタルジア月光」となる(まだ変わるかもしれませんが)予定である。しばらく休憩ののち、「ファドのワルツ(仮題)」「カーヴォ・ヴェルデ」。たっぷり時間をかけて8時15分終了。
 さあやっと晩飯にありつける。ということで、一同、原澤氏ご推薦の世田谷・池ノ上の駅前にある台湾料理の店へ行く。小さくて家庭的な店だが、美味しい料理の数々で堪能。特に豚足は絶品であった。この後、近くのちょっとおしゃれな居酒屋?へ。ここは、元キングトーンズのメンバーだった方がやっている店。結構食べ物も美味しいのだそうだが、台湾料理をたらふく食べた後で全員満腹で何も食べれなかった。残念。
 ここで解散して、タクシーでホテルへ戻る。途中、マリオネットが懇意にしている某社の会長秘書の方から携帯に電話が入る。マリオネットの両名をホテルで下ろして、打ち合わせに六本木へ。すると、会長自身もおられて、打ち合わせもそこそこに、いっしょに朝まで痛飲。ハードな一日であった。

9月10日(金) 晴れ時々曇り

 昨日(今朝?)の余波でなかなか目がさめなかった。結局食事抜きでスタジオへ。
 吉田は朝から現代ギター社へ楽譜集の打ち合わせに出向いていたようだ。今、吉田がかかわっている楽譜集が3冊(ひとつはマリオネットの作品集の第2集、ひとつはマリオネットの曲をマンドリンアンサンブル用に編曲したもの、もうひとつはマリオネットではなく、吉田が指導しているマンドリンアンサンブル「ラフィーヌ」の為に、大阪在住の作曲家・千秋次郎さんに作曲していただいた曲の作品集である)平行して進行していて、お待たせしている第2集がなかなか出ない。今月も無理かもしれないが、遅くとも11月中には3冊すべて出るそうなので、もうしばらくお待ちいただきたい。

 その通り!!楽譜をお待ちの皆さん、今しばらくお待ちください。おなじみ吉田です。早ければ第2集は9月終わりには出るかもしれません。「ラティーナの誘惑」や「お嬢様の秘密」などが入っています。また、マンドリン合奏用の編曲ものは「南蛮渡来」と「虹色の空へ」の2曲組です。どちらも是非、一家に一冊どうぞよろしく。千秋先生の曲も、わかりやすくて良く鳴る曲で、透明感のある叙情性は独特の世界です。こちらもお奨めです。 要するにこの秋は、私達の関連の楽譜がどんどん出るわけですが、それ以外にも既に第3集の制作も進んでいます。ここのところ録音している新曲を中心に収録の予定です。これは来年の刊行予定です。今日は事務モードの吉田でした。では。

 湯淺はといえば、マリオネット共通の10年来の友人であるK女史と会っていたようで、スタジオへ一緒にやってきた。彼女は司会や声優などの仕事をしていて、歌も唄う。もともと関西にいたのだが、2年ほど前から東京に出てきて仕事をしている。東京でライブがあるたび、顔を出してくれる。
 1時からトラックダウン開始。「話し合い(仮)」から。ドラム・ベース・パーカッションと多く音が入っていて、音質やバランスの決定が大変である。たっぷり時間がかかってしまった。3時40分終了。なお、この曲のタイトルは「フェスタス・デ・リスボア」もしくは「リスボンのフェスタ」のどちらかとなる予定。これでポルトガルギターがメインの曲はすべて完了した。
 続けてマンドリン関係のトラックダウンへ。まずは「沖縄センチメンタル」から。これもパーカッションなど細部の決定に手間取り、6時15分終了。ここでブレークして夕食の出前を発注。ここで、難関が予想される「イベリア」のトラックダウンに入る。この曲は、ギターとマンドリュートの組み合わせという珍しいタイプの曲。これにパーカッションとベースが入って、分厚いサウンド。途中、出前が届いたので夕食タイム。7時半、再開。細部のバランスに大いに苦労して、10時半、終了。大満足の出来あがりあってった。
 今夜はどこへも出かけず、おとなしくホテルへと引き上げ。順調に行けば、明日終了するかも?

9月11日(土) 晴れ時々曇り

 ゆっくり起床。12時過ぎにホテルを出て、スタジオの近くでおろし蕎麦と麦とろご飯を食べる。胃にやさしくて落ち着く。
 各自ばらばらにスタジオ入り。湯淺は夕べ、新宿ゴールデン街の「石の花」と、三丁目にあるこれも「石の花」の2件をはしごしてきたらしい。元気が戻ってきたようだ。原澤氏は、ウクレレの講師(ウクレレのプロでもあるのです)の仕事があって少し遅くなるとのこと。
 ということで、1時前にはトラックダウン開始。まずは「花の葬列」から。続いて「詩人と女優(仮)」(正式タイトルを検討中です)「道2(仮)」(こちらも正式タイトルは検討中)「働く日本人」「守銭奴」と概ね順調に落ちて、7時25分、ようやくすべての行程を終了した。全15曲、どうぞ発売を楽しみにお待ちいただきたい。
 終了後、青山のブラジル料理の店で打ち上げ。その後一同解散して、マリオネットのみで、新宿ゴールデン街「石の花」へ、その後、歌舞伎町の「ぶうげん」へと足を伸ばし痛飲。湯淺は最後は寝てしまった。午前4時前にホテルに帰り着き、就寝。明日は昼頃に出て、車で大阪への移動。ようやく帰れる。少々長かったが、何とか録音を乗りきった。今回のCDが、皆様の支持をいただける良い出来でありますように。発売まで、ライブでまたお会いしましょう。