番外編４（湯淺�驍ﾌ巻／我、凡才一塊なり）

湯淺隆

　「ものづくり」とは、自身の深さに降りてゆく作業である。「深さ」とは決して特別なことではない。それは、日常生活のほんの一瞬に見え隠れする、一時が万事の出来事への注意力である。つまり「深さ」とは、自然に身に付いた仕草への言及なのだ。

　例えば、「ものづくり」と対極の「世渡り」なら、借りてきた知恵を流用しパッチワークすることで、「世間」は無害な交渉ごとの成立に安心し、その代償として、かりそめの快適さを約束するだろう。（だが今や、そんな甘えも実社会では通らぬようなっているが・・・）

　しかし、自身が自身に言及する「ものづくり」という作業は、唯一無二の自身が、その根拠を、今「ここ」に依拠しながら『今「ここ」』を自問する、いわば、時空間に逆らうような矛盾に満ちた、実に危うい作業なのである。だからこそ、真に「ものづくり」された、「もの／こと」は永遠の生を宿すのだ。

　俗に言う、それら「天才」のなせる業は、以上の理由で、逆に安らかに死することも出来ず、永遠に「世間」に貼り付けられる憂き目にあう。「天才」は、その役目からして悲劇を生きる。

　いわば、自身の深さに降りてゆく作業とは、そんな「天才」が住む危険な扉を、好奇に満ちて開けにゆく過剰で邪（よこしま）な凡人の欲望と言えよう。

　ところで、誠に残念だが、結果として、たんなる凡人の「ものづくり」は、すべて無に帰す。だが、私はそのはかない生命の明滅を愛する。何故なら、無に帰する寸前の煌めきこそが、再生へ開かれた予感のシグナルであり、全宇宙・全存在の豊饒と永遠を謳歌するからである。

　さても、我、凡才一塊なり。しかして、覚悟は命がけ。ここに再度「ＡＬＧＯ」を、くれぐれも宜しくお願いする所以である。