その壱拾弐(マリオネットの巻/グランドーラ ヴィラ モレーナ)

湯淺隆

 1987年、初めてこの曲を聴いたのは、まだうら若き頃の日本のFadoの第一人者・月田秀子に誘われて行ったリスボン大学のイベントだった。会場は結構大きなホール。イベントの雰囲気は、日本のひと昔前のフォークソングの集会風で、『グランドーラ ヴィラ モレーナ』は、「集会」の一番最後に全員起立で歌われた。後日この曲は、反体制派歌手ジョゼ・アフォンソによる革命に向けた歌で、1974年4月25日午前0時25分、ラジオからこの曲が流れたのを合図に国軍運動の将校たちは決起し、「カーネーション革命」(別名・リスボンの春)に至ったことを知り、かの雰囲気もしごく合点がいった。

 原曲の録音は、行進する足音のリズムに合わせて、アカペラで歌われる。本録音でマンドリュートが2声になるところは、原曲では男声合唱が朗々と重なる。無骨な曲だが、聴く程に、深くしみわたる曲である。


番外編4(湯淺驍フ巻/我、凡才一塊なり)