その八(マリオネットの巻/檸檬サウダーデ・かなしい勇気)

湯淺隆

 俺は哀しいのだ お前を殺し 奴を殺し 自分をも殺し 無数の死と理不尽を抱え でも 生きて行かねばならない だから 消されちまった俺たちは 透明な陽炎にでもなって 知らない街の夕刻あたり 地熱を孕んだアスファルトに ゆらゆらと現れ 響き合うのだ きっと 風は切なく心を通り過ぎ 悲しい勇気が 胸をしめつけるだろう 見よ まさに今 かぐわしかった檸檬の記憶が蘇えるではないか


その九(マリオネットの巻/小さなお話し・ぞうとのみ)