番外編(マリオネットの巻/霜月、途中経過)

湯淺隆

 10月29日、音入れ完了。一日前倒しのアップで、まずは安心。刷り物も、ほぼ校正が終わり、11月2日の夜には、全ての行程を終了し、データがプレスにまわされる。綱渡りだった日程も、重大な事故もなく消化できた。「CD」は、製品となり注文枚数が箱詰で各所に届くまでは、決して油断できないが、我が責任の所在が、徐々に具体的な音や文字に変換されていくと、いささかなりとも肩の荷が下りる。

 が、反面同時に、我が身からいずる分身が、今後は後戻りできず、様々な脈絡の内に解釈され、どう組み込まれていくのか、期待と不安が入り交じる瞬間でもある。

 「CD」も情報である以上、他者と交通可能な「言葉」である。そのやり取りの際の脳内パルスの摩擦熱のようなものは、生命を活性化させ、たんに「ここ」ではない、「どこか」を表出させる。その刹那の風景は、人様々だろうが、少なくとも現世あるいは現生が、「個」に閉じた陰々滅々たるものではなく、「どこか」希望に値するものであると、逆に「ここ」で感じて欲しい。

 「ALGO」は、そんな思いを込めて作った。11月24日には、その分身が美しい衣裳をまとった「CD」として手元に届けられる。そこから始まる「何か」即ち「ALGO」を、是非皆様にもお聴き頂きたい。


その八(マリオネットの巻/檸檬サウダーデ・かなしい勇気)