ボウリング場から表へ出ると、駐車場を兼ねた広場には縁日の屋台が並んでいました。地元の親子連れや町内会の役員らしき人が、大勢集まっています。
遠くのほうでは、夜空にむけてあざやかな大輪の花火が次々に打ち上げられています。
きょうは、江戸川の花火大会だったのです。
「花火かあ。きれいなもんだなあ。江戸川の花火なんて、初めて見るよ」
縁日で買った焼きそばとお茶を膝に乗せて座り、花火の美しさに感激して思わずため息をもらすと、横で並んでやはり光の行方を眺めていたわがチームの主将が
「今日は、お前のためにあったような一日だったな。運動が苦手なやつだと思っていたが、なに、人間、どこに才能が隠れているか分からないものだ。何ごとでも、まずは試してみることが大事というわけだ」
と、えらく説教臭いことを言いました。
「なるほど、そうかもしれん」
照れながら僕は答えて
「それにしても、僕らのチームが負けてゲーム代を払わされずに済んでよかった。僕が足を引っ張ったせいで、君たちに負担をかけてはすまないと、それだけを思ってがんばったんだよ」
いささか大げさなことを言うと、
「なんだ、知らなかったのか。知らなくて幸いだった。今日は江戸川花火大会のために、ボウリング場は無料開放日なんだ。結局、今日のゲーム代はだれも払わなかったのさ」
そう言って、友人はにやにや笑いました。
(終わり)
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