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| ことばをめぐるひとりごと
 その10 「だよね」   われわれは人と話すとき、労力と時間を節約しようとして、ことばを短くします。日本語の場合、ほとんどの音に母音が付いているので、どんどん省略しなければ言いにくくてしかたがないという事情もあるでしょう。 
−−じゃあ、今のところ自分で何かこの仕事っていうビジョンは決まってないわけですね。 
 答え手が「ですね」と言っているのは、「そうですね」「おっしゃるとおりですね」などの省略でしょう。最近こういう省略のし方をよく耳にします。1995年にヒットしたラップ「DA・YO・NE」(作詞・GAKU+MUNNY-D)はそれを意識的に取り入れたものとみえます。 
 「先生、どうです、お燗(かん)は。もう少し燃させましょうか」と門野が突然入り口から顔を出した。門野はこういう事にはよく気のつく男である。代助は、じっと湯に浸ったまま、 
 この「ですか」も、「結構ですか」などの省略でしょう。「言いすてて」と書かれているので、当時としてもぞんざいな言い方だったと思われます。 北八「ナニ走ったとは、逃げたのか。ソリャ大変だ大変だ。その男の着物といふは俺がのだ。 「そうかいな」の意味で「かいな」と言っています。これは上方の方言ですが、関東でもこうした省略があったかもしれません。現代の東北方言で「そうだ、そうだ」というところを「んだ、んだ」と言うのは、同じ発想によるのでしょう。 (1997年記) | 
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