「秩父祭屋台囃子保存会」が平成4(1992)年5月13日に発起設立されました。本来であれば、文化財保護制度上の保護団体の一つとして、国の重要無形民俗文化財の保護団体である「秩父祭屋台及び屋台行事と神楽保存委員会」の下に設立されたはずでした。


 
ところが、発起人にこのことに関する認識が欠如していたことから、「底辺を広げる」として、重要無形民俗文化財保護の対象である六か町以外の団体(川瀬祭の町会から同好会まで)を構成員とするという致命的な誤りを犯したのでした。このことから、埼玉県文化財保護課(当時)からは、保護団体として認定されないだけでなく、「重要無形民俗文化財」の名称を使用することも認められず、『会則』(写真左)の受領すら拒否されたのでした。

 この事実は、「底辺」とされた会員に伝えられず、「重要無形民俗文化財」の看板を下ろすことなく、その後、秩父祭の六町会や川瀬祭りの町会その他から成る組織は、『秩父屋台囃子保存会』。その中に「秩父祭の屋台行事」を行う屋台町から構成される『秩父祭屋台囃子保存会』を位置づけるという小手先の規約変更をして現在に至っています(「秩父祭の屋台行事」の保護団体は、六つの屋台町から構成されますが、『秩父祭屋台囃子保存会』に下郷町会は加入していません。)。

 会則では、設立の「目的」として、「国指定重要無形民俗文化財「秩父祭の屋台行事と神楽」の重要な一翼を構成する、「屋台囃子」の歴史的伝統を損なう事なく次世代へ伝承するため、その保存・維持・公開を行う事を目的とする。」とし、この目的を達成するため、「正しい伝承のための指導・啓蒙」、「歴史・伝承等に関する調査・研究」、「屋台囃子の公開に関する事業」、「保存会会員として行う事業」、「会員相互の親睦」などの事業を行うはずでした。

秩父屋台囃子保存会主催の練習会 しかし、実際に事業として行われているのは、練習会(写真右:毎月第2水曜日に秩父神社平成殿)の開催、各種イベントに呼ばれての年数回の興業親睦会以外に特にありません。保存会の設立目的の一つである「指導・啓蒙」にしても、組織の根拠である文化財指定の告示も知らずに出来るわけもなく、保存会の名に相応しい機能を果たしているとは言えません。これでは、『秩父大祭下郷笠鉾と祭礼行事概説』(平成30(2018)年6月30日)を刊行するなど、高い見識を持つ下郷町会から賛同を得ることはないでしょう。

 その結果、秩父祭の屋台町における伝承活動との関連性のない、秩父屋台囃子とは異質の太鼓芸を行う団体が「秩父屋台囃子保存会」の名称を公然と使用し、その主宰者が「秩父屋台囃子保存会会長」を名乗り、秩父祭に関する報道では、秩父屋台囃子の代表として扱われます。

 その一方で、日頃、屋台町で町内の先輩や親の世代から受け継いだ屋台囃子を次世代に伝えようと懸命に尽力し、大祭の当日は、笠鉾・屋台の中で秩父屋台囃子に携わり、秩父夜祭を陰で支えている伝承者が祭りの主体として社会一般に認識されていない状況が依然として続いています。


 ここは一から出直して、秩父祭の屋台行事を行う
六か町による保護団体の構築(組織)と「保存会」の名に相応しい在り方(事業)が求められます。

  (2019年3月5日  中村 知夫)

(C)2001 Copyright by 秩父屋台囃子.All rights reserved