ここでは、文化財保護制度における秩父屋台囃子の現行の保護団体について説明し、その上で、当該保護団体以外の任意団体が文化財を詐称している問題を取り上げます。



 昭和52(1977)年3月29日、埼玉県教育委員会は、秩父屋台囃子(文化財指定上の文言は「秩父屋台はやし」)について、それまでの埼玉県無形文化財の指定解除と同時に、
埼玉県指定無形民俗文化財に指定しました。その際、その「保護団体」として、秩父祭の六つの屋台町の屋台ばやし保存会が明記されました
(写真左:昭和52年3月29日付埼玉県報)。
〔保護団体〕
中近屋台ばやし保存会
下郷屋台ばやし保存会
宮地屋台ばやし保存会
上町屋台ばやし保存会
中町屋台ばやし保存会
本町屋台ばやし保存会
【埼玉県指定無形民俗文化財 秩父屋台ばやし 埼玉県教委告示第11号】
 
 その後、昭和54(1979)年2月3日、「秩父祭の屋台行事と神楽」が国の
重要無形民俗文化財に指定され、「秩父屋台ばやし」は、「秩父祭の屋台行事」の一つとなりました。指定の「格上げ」です。

 この屋台行事の「保護団体」は「秩父祭屋台保存委員会」ですが、屋台行事を行うのは六つの屋台町であり、秩父屋台ばやしの「保護団体」が六つの屋台町の屋台ばやし保存会であることに変わりありません。
〔保護団体〕秩父祭屋台保存委員会 秩父神社神楽保存会
【重要無形民俗文化財 秩父祭の屋台行事と神楽 文部省告示第11号】




 ここまで秩父屋台囃子に対する文化財の指定を確認してきました。

 一方で、当該指定とは無関係の団体が「文化財」を名乗り始めます。
 平成4(1992)年5月13日、『
秩父祭屋台囃子保存会』が発起設立されました。昭和54(1979)年2月3日の重要無形民俗文化財指定から13年後のことでした。本来であれば、重要無形民俗文化財の保護団体である六か町で構成すべきところ、発起人の認識の欠如から「底辺を広げる」として、六か町以外の団体(川瀬祭の町会から同好会)までを構成員とすると言う致命的な誤りを犯したのでした。

 埼玉県文化財保護課(当時)は、文化財保護とは関係ない。「重要無形民俗文化財」の使用は認めないとし、平成6年9月21日に持参した『会員名簿』(写真右)も受け取りを拒否しました。しかし、こうした事実は、会員(「底辺」とされた会員を含む。)に説明されることはありませんでした。

 言うまでもなく、秩父屋台囃子に関する重要無形民俗文化財の「保護団体」は、六つの屋台町の「屋台ばやし保存会」であり、これ以外に存在しません。にもかかわらず、「重要無形民俗文化財」を
詐称する『秩父祭屋台囃子保存会』が今も存在し続けています。

 なお、後に、秩父祭の町会や川瀬祭りの町会その他から成る組織は、『
秩父屋台囃子保存会』。その中に『秩父祭屋台囃子保存会』(下郷は未加入)を位置づけるという小手先の規約変更をしたため、ますます混乱を招く結果となっています。



 秩父屋台囃子は、昭和52年3月29日に埼玉県指定無形民俗文化財の指定を受け、その「保護団体」として、六つの屋台町の『屋台ばやし保存会』が明記されています。

 一方、埼玉県文化財保護課から文化財とは関係ないとされ、「重要無形民俗文化財」の使用は認めないとされた『秩父祭屋台囃子保存会』が依然として存在し、文化財を公然と名乗るという錯綜した状況が続いています。
 今後、この状況は、どうすればいいのでしょうか。

 先ずは、埼玉県指定無形民俗文化財の「保護団体」として昭和52年3月29日付の埼玉県報に告示され、指定証書(写真左)が交付された6団体です。

 この指定に基づいて、実際に保存会が発足したのは『下郷屋台囃子保存会』の1団体のみ。他の5団体は、これ以前から自然発生的に存在していた「
太鼓連」のままであり、保存会による組織的な運営という発想はありませんでした。指定から半世紀。屋台囃子をめぐる状況は大きく変化し、これまでのような場当たり的な対応では、屋台囃子の継承が困難になるのは必至です。

 今こそ、6町会全てに「
屋台ばやし保存会」を設立され、予算や事業計画に裏打ちされた、文化財の「保護団体」に相応しい伝承活動が求められます。

 それと並行して、六つの屋台町により「
秩父屋台ばやし保存会」が設立されることが望ましいに違いありません。地元行政に能力の点で期待出来ない以上、いち早く保存会を発足した下郷を始め、六か町の見識と意欲に大いに期待するしかありません。

 一方、平成4(1992)年5月13日に発起設立されたものの、埼玉県文化財保護課から文化財と関係ないとされ、「重要無形民俗文化財」の使用も認められていない『秩父祭屋台囃子保存会』です。最早、救いようはないものか。文化財保護制度上の「保護団体」でない以上、「重要無形民俗文化財」の看板など潔く下ろし、文化財保護の埒外の
任意の親睦団体として存続すればいい。

 そうすれば、月一回の「屋台囃子練習会」(写真右)や年数回の興行と称する「公開」しかやっていない。「文化財」を名乗りながら文化財指定の「告示」を見た者がいないなどと批判・嘲笑を受けることもなくなります。

〈補足〉
埼玉県教育委員会の告示は、下記の手順で閲覧可能です。
埼玉県法規集データベース「目次検索画面へ」→「第11編教育」→「第8章文化財」→「第2節有形、無形文化財」


  (2024年8月18日  中村 知夫)

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