秩父屋台囃子は、秩父地方のそれぞれの地区で伝承され、その祭礼で演奏される祭り囃子です。 小さな集落にも、先祖伝来の祭りを絶やしてはならないと懸命に努める人たちがいます。どの祭りでも、秩父屋台囃子は力強く、笠鉾や屋台の巡行には、例え、見物客がいなくても、地区の人々が自分たちの祭りに誇りを持って、皆で力を合わせます。秩父の四季の祭りです。
春
厳しい寒さの中にも、明るい日の光に春を感じるようになる頃、秩父地方は、「山田の春祭り」で笠鉾・屋台が登場する祭りの幕開きとなります。
彼岸を過ぎ梅の花が散る頃、地元の高校を卒業した若者の多くは、進学や就職のために生まれ育った故郷を離れていきます。秩父屋台囃子にしても、やっと一人前の伝承者に育ったところでいなくなる。その成長を楽しみにしてきた町内の者が無力感に襲われる時でもあります
やがて、桜も散り、周囲の山々が萌黄色の新緑に包まれて、春祭りの時期が過ぎて行く。別れの季節の春祭りです。
・山田の春祭り(秩父市山田恒持神社)3月第2日曜日春を呼ぶ祭り。
笠鉾1台と屋台2台が曳行。屋台では曳き踊りを上演。
・宇根の春まつり(横瀬町宇根八坂神社)4月第1日曜日桜が満開となった武甲山の麓の山里を笠鉾2台が
曳行される。
・小鹿野春まつり(小鹿野町小鹿神社)4月第3土曜日とその前日〔写真〕笠鉾2台と屋台2台が曳行。
女子による「金棒突き」が先導する。
夏
梅雨が明けると、秩父地方は、盆地特有の猛暑に包まれ、「悪疫退散」を願う夏祭りが各地区で行われます
かつて大勢の見物客で賑わったことがまるで嘘のように、今は、訪れる人も殆どなく、猛暑の中、草いきれと蝉時雨にうだるような祭りもあれば、日も暮れ、夜風に一抹の冷たさを感じる市街地の祭りもあります。
しかし、笠鉾・屋台から響く秩父屋台囃子の迫力は、なされるべき存続の術(すべ)なく進む地域の衰退に抗うようであり、人々が力を合わせて、笠鉾や屋台の曳行に汗を流す夏祭りです
・川瀬祭(秩父市秩父神社)7月19・20日屋台4台と笠鉾4台が曳行。
20日午後、武之鼻の荒川で神輿洗い。
・親鼻の祇園(皆野町親鼻)7月第4土曜日旧番場屋台が曳行。
暗闇に篝火の荒川で神輿洗いが行われる。
・原の祇園(皆野町原)7月第4日曜日屋台1台が曳行。
土台部分は寛政7年、名工藤田大和建造の下郷笠鉾。
・柿沢の祇園(秩父市中宮地・柿沢)7月最終日曜日笠鉾2台が曳行。
昭和37年以降中断した後、平成になり見事に復活。
・栃谷の祇園(秩父市栃谷八坂神社)7月最終日曜日〔写真〕笠鉾が3台はここだけ。
しかし、ここしばらく3台揃うことはない。
・白久神明社夏祭り(秩父市荒川白久)7月最終日曜日土台部分に神輿を載せた笠鉾1台が集落を巡行。
猿田彦命が先導する。
秋
周囲の山々から徐々に木々が色づく秋。秩父地方は、まるで木の葉が舞うように人口の流出と高齢化が加速しています。
かつて年間400あるとされた祭りも、10年後に一体いくつ残るのか。秩父で祭りを続けることの難しい現実が迫っています。それでも、地区の人々は、先人から受け継いだ祭りを自分の代で途絶えさせてはならないと、笠鉾の曳行に力を合わせます。見物に訪れる人も殆どいない、小さな集落の小さな祭りでも、そこに暮らす人々にとっては、大切な年中行事です。山々に秩父屋台囃子が木霊し、抜けるような青空に笠鉾が映える秋祭りです。
・三沢八幡大神社例大祭(皆野町上三沢)敬老の日の前日〔写真〕笠鉾1台が曳行。
暑さも和らぐ、秩父で一番遅い夏祭り。
・浦山大日様(秩父市浦山大日堂)10月第4土曜・日曜笠鉾1台が曳行。
浦山川の奥、V字渓谷の底で獅子が勇壮に舞う。
冬
ある者は自分の周囲が次々と空き家になっても、またある者は自分に残された時間はそれほど長くないと感じながらも、それでも先人から受け継いだ祭りを絶やしてはならないと、懸命に行事に取り組む人たちの姿があります。秩父の大祭は、このような人々によって支えられています。
「秩父祭の屋台行事と神楽」がユネスコ無形文化遺産に登録された際、まるで行政が表彰されたかのような「万歳」が一部でありました。しかし、祭りや秩父屋台囃子を担うのは、屋台行事存続に黙々と奮闘する名もなき人々です。登録など知らない、祭礼文化を担う人々の思いに共感する冬祭りです。
・秩父夜祭(秩父市秩父神社)12月2日:宵宮・3日:本祭〔写真〕笠鉾2台と屋台4台の曳行。
屋台芝居、曳き踊り。神楽殿で秩父神社神楽。
3日夜に御旅所で斎場祭、羊山で「煙火打上競技大会」等煙火打上げ。
・鉄砲祭り(小鹿野町飯田八幡神社)12月第2日曜日とその前日笠鉾と屋台各1台が曳行。
空砲が炸裂する中、神馬が石段を駆け上る。
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