最近の研究によると、日本企業の場合業績悪化で社長が交代するケースは少ないという。しかしながら、すべての企業の業績が好調なわけではない。成功と失敗の明暗はむしろ明確になっているように思われる(注1)。 では、何故に負けをもたらす失敗をするのか。マネジメントの話の前に、戦史研究の名著『失敗の本質』による失敗の要因をみてみると、次の7つに要約できる。
今の時代に、ビジョンもなく、価値観の共有化も徹底されず、自社能力の客観的な判断が出来ず、単なる直感的な意思決定が行われている企業など皆無だと思われるかもしれない。また、人事は合理的、客観的に行われ、会社は組織、チームで動き、成功事例も失敗事例も組織が共有して学んでいるものだと思われるかもしれない。だが、はたしてそうか。筆者には一部の企業を除いて、上記の7つのすべてではないにせよ、いくつかは該当するケースが多いように思う。そこで、こうした企業にとって失敗の目をつぶすには、今一度次のチェックリストで確認してほしい。すべて該当していれば、形式的には優れた会社である(注2)(注3)。
しかし、いうまでもなく、ビジョンや戦略を方向付けし、最終的にそれらを決めるのは経営トップである。トップのキャラクター、資質によって戦略も変わってくるのである。この意味で、企業はトップ次第で勝敗が分かれるといえる。 このように、企業にとってトップの選定いかんで成否が分かれる。「負ける原因」をつぶす前に、トップの人選こそ最優先課題である。現トップは後継者の育成、人選にあたって、単に社内のみならず、国内外から適任者を選ぶ視点が必要である。 社長の外部からの登用の例としては、2002年6月に機械部品専門商社のミスミが三枝匡氏を社長・CEO(現会長・CEO)にしたケースが有名だ。最近では、自動車部品メーカー、ユーシンの社長公募が話題になった。両社とも創業者がトップの外部からの招聘を主導したものだ。 しかしながら、所有と経営が分離し、いわゆるサラリーマン社長が代々トップに就任している企業でも社長の外部招聘が不可能ではない。委員会設置会社制度を採用し指名委員会が機能すれば、社内外、国内外から社長の適任者を選ぶことができる。 問題は現トップが企業の未来や企業価値を高めることにどこまで拘っているかに関わると思う。社内の雰囲気に荒波を立てずに現状延長で行くのか、それとも社内の人材を超えて可能性に賭けるのか、それは未来に対する危機感にも影響される。 経営トップの力量が業績を大きく左右されることはいわずもがなかもしれない。しかし、あえていえば、それゆえに社長を選任する選択肢は多く持つべきだ。そのためには、指名委員会の効果的な活用を考えるのも一つの方法だ。もし創業者あるいは強力なリーダーシップを持つトップであれば、自らが次期社長の外部招聘を決断すればよい。この機会に、社長の力量と業績との関係、そして後継者選びについて熟考してほしい(2010年10月1日改訂)。 注1: 社長交代に関して詳しくは下記を参照. 久保克行『コーポレート・ガバナンス〜経営者交代と報酬はどうあるべきか』(日本経済新聞社) 注2: ビジョンといっても抽象的である.そこで,筆者は企業ビジョンをビジョンを一言で表現するテーマと,例えば,中長期的な売上,利益,経営指標などの数値目標を明確化すること,そして「事業ビジョン」「運営ビジョン」「組織ビジョン」を明らかにすること,と定義している. 注3: 今どき上場企業で,能力よりも縁故・同族もないと思う向きもあるかもしれない.だが,手元に正確な数字はないが,実際創業者の子息や兄弟などが能力とはあまり関係なく早く昇進しているケースが散見する.筆者は世襲政治家問題と同様に,創業者一族が後継者になることに全面的に反対ではない.自他共に認める実力が伴っていれば、社会の公器たる企業のトップあるいは幹部として誰も文句のいいようがないだろう. 注4: 詳しくは,2006年10月の提言『トップは今何をすべきか?』を参照. http://www.csconsult.co.jp/teigen/0610.html |
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