現存する日本最古の企業は、飛鳥時代(589年)に創業された天王寺市にある寺社建築(宮大工)の金剛組である。また世界最古といわれるホテルは、養老2年(718年)に創業した粟津温泉の旅館「法師」(石川県小松市)だ。 このように1400年以上も前から続く老舗企業が現在も存続している。業種で見ると江戸時代までに創業した老舗企業は、和菓子、旅館、酒造、医薬品、呉服・和装などが多い。ちなみに、現在上場している製造業で日本最古といわれるのは1590年創業の住友金属鉱山である。江戸時代には、松坂屋(1611年)、三越(1673年)などの百貨店をはじめ、製薬、醤油・油脂、鉄鋼、輸送機器、銀行、商社、建設など多くの上場企業が創業している。 では、こうした老舗企業は「何を変化させず」「何を変化させて」きたのか。老舗企業を対象とした調査結果によると、「変化させていない伝統」は次の6つである(以下、横澤利昌編著「老舗企業の研究」(生産性出版)による)。
別の調査によると、老舗企業はベンチャー企業に比べて、企業理念が明文化されていないという結果となっている。これはベンチャーは企業ビジョンや企業理念を明文化して価値観の統一を図る必要があるが、老舗企業はすでに理念が浸透していて明文化するまでもなかったと見た方がよい。 重要なのは老舗企業といえども、果敢に変化していることある。例えば、100年前に創業した株式公開企業をみると、ほとんどが事業内容をシフトしている。1899年創業のNECは、当初米国企業との合弁会社として、電話機の輸入販売からスタートした。現在では、皆さんもご承知のように、C&C(コンピュータと通信)分野へと事業領域を広げている。更に、カゴメ、森永製菓、凸版印刷、日清製粉など多くは事業構成を変化させているである。 ところで、老舗企業とはいかないまでも、歴史のある伝統的な企業あるいは成熟企業の中には、変革の意識が乏しい企業が散見される。こうした企業は、本業重視、堅実経営の名のもとに新たな事業のタネ探しを怠っていないか、守りの経営といえどもタイムリーな攻めを忘れていないか、などを自問すべきである。 老舗企業の不易流行、つまり、不変の原理(不易)と可変の原理(流行)から学ぶべき点は多い(注2)。 注1: 金剛組は2005年11月に高松建設の傘下に入った。 注2: 老舗企業の「不易流行」に関しては、拙著『ブランディング・カンパニー』(経林書房、但し、現在絶版)のpp.77-81及び pp.119-129を参照。 |
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