今月の提言


12月の提言:『2006年を総括すると!』



今年のビジネス・経営に関するビッグニュースといえば、ホリエモンこと堀江氏の逮捕から始まった。その他、耐震偽装問題の関係者、村上氏、自治体首長などの逮捕など暗いニュースが相次いだ。

ところが、来年以降に光明がみえる明るいニュースも存在する。例えば、下記のようなM&A関連のニュースである。

 3月17日 ソフトバンクがボーダフォンの買収を発表
 6月 8日 すかいらーくがMBOの方針発表
10月 1日 阪急ホールディングスと阪神電鉄が経営統合
12月14日 レックス・ホールディングス、MBOに向けて実施したTOBが成立

昨年日本のM&A件数は過去最高の2,725件を記録した。昨年11月末時点でのM&A件数は2,449件だが、今年は同時期に2,495件に達しているので、過去最高を更新する可能性は高い(レコフ調べ)。

M&Aの中でもMBO(Management Buy-Out)が増加してきた点が注目される。MBOは「経営陣による企業買収」といわれる企業買収手段の1つである。企業や事業部門の経営者あるいは幹部社員が、事業の継続を前提として親会社や株主から株式もしくは営業資産を買いとり、経営権を取得するものだ。2005年のMBO件数は67件(04年は43件)に急増し、投資総額は公表分だけで2,975億円に達した。06年11月末時点で件数は75件、金額ベースで6,204億円と前年を大きく上回っている(同じくレコフ調べ)。

ところで、MBOの活用目的は次の3つに大別できる。
  1. ノンコア事業の分離
  2. 親会社からの独立
  3. 株式の非公開化
MBOは80年代初めに、英国の国営企業を民営化するための手法として活用された。これまで事業に携わってきた経営陣や幹部がそのまま株主となり独立する、いわば「のれん分け」に近いイメージだ。日本企業が90年代半ば以降「選択と集中」の経営を実践する中で、日産やダイエーをはじめ多くの企業が上記の1,2の目的でMBOを行ってきた。

しかしながら、昨年は、ワールド、ポッカコーポレーションなどがMBOを実施、今年はすかいらーく、焼肉の牛角、CVSのampm、高級スーパーの成城石井を傘下にもつレックス・ホールディングスなどがMBOを行った。いずれも株式の非公開化を狙ったものだ。

こうした「株式の非公開化」を狙ったMBOが増加した背景は主に2つある。先ず、事業の建て直しなどで長期的な視点から投資が必要であり、短期的な業績悪化が避けられないケースである。この場合、非公開化して経営者の戦略推進のフリーハンドの余地を残そうというものだ。次に、来年5月に外国企業が在日子会社を活用して自社の株式を対価にして企業を買収する三角合併が解禁される。これに備えて企業防衛策として上場を廃止し、買収リスクを避ける動きである。

筆者は今年は、堀江、村上両氏による企業価値向上の正論の挫折と各社の「企業価値向上」への布石の年であったとみる。M&A及びMBOの増加もこのような文脈で把握したい。しかしながら、「株式の非公開化」によってガバナンスの手を緩めることになれば、それは問題である。株式の非公開化が将来の企業価値向上を目指す戦略的な決断であれば、CSR経営の定着化や企業統治の強化に注力すべきである。

皆さんの会社にとって、来年はM&Aを含めた戦略オプションを視野に入れながら、一層の企業価値向上の年となることを期待したい。


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