6月は3月期決算企業の株主総会のシーズンであるとともに、4月と並んで新社長登場の時期でもある。日本経済新聞社の調べによると、今年の上半期の社長・頭取交代は600社弱であるという。調査対象の上場企業及びそれに準じる企業約4,000社のうち、15%の企業は社長が交代することになる。しかも、電機業界その他のリーダー企業のトップ交代が目につく年でもある。 新社長の平均年齢は57歳で、昨年度に比べてやや上昇したが、40代社長は微増した。つまり、リストラが一段落して若い世代に次なる成長の機会を委ねようとする一方で、経験豊富なベテランを登用している点が特徴である。競争環境が厳しさを増す中で、世界規模でのグループ経営の舵取りが求められる。それゆえ、若さのみならず、安定感やバランス感覚が重視されたものと思われる。なお、主な新社長の顔触れは次の通りである。
ところで、企業も国もトップ次第だということは、今さら声を大にしていうまでもないことだ。しかしながら、あえて伊丹敬之教授(一橋大学大学院)は最近「社長論」を展開している。一つは、社長の器量を推し量る「顔つき論」であり、もう一つはダメなトップに共通する「5つの性癖論」である。「顔つき論」を公に云々するのは、筆者の趣味ではないので、後者に関して紹介しよう(注1)。 伊丹教授によると、ダメな経営者に共通する5つの性癖は次の通りである。
「経営者にとって一番必要な条件は、論理的に考える力をもっていることである。なぜならば、経営は論理の積み重ねだからである。・・・論理の反対は情緒である。情緒的にものを考える人は、経営者には向かない」 ビジネスの世界で論理的にものを考えるには、問題点、疑問点を「なぜ」の問いかけをもって徹底的に追及することが不可欠である。問題の本質を追求し、そのうえで情報の不確実性をも考慮して結論を導く論理が大事なのである。 そして、筆者が上記の5つの性癖にもう一つ付け加えるとすれば、「ビジョン、哲学が伝わってこない」ということになる。ビジョンとは長期的視点、例えば10年後の会社の「あるべき姿」や到着点を意味する。哲学はトップの経営に対する価値観と言い換えてもよい。 新社長に期待したいのは、「ビジョン、哲学」を社内・社外あるいは国内外のステークホルダーに分かりやすく説明する能力である。さらに、ビジョン実現のために、社内外の抵抗を乗り越えて、問題点を浮き彫りにし解決策を導く論理力であり、実行させる決断力である(注2)。 新社長を含め経営トップは、少なくても10年のスパンで会社の方向を描き、論理をもってマネジメントを実践してほしい。 注1: 伊丹敬之「経営時論/名経営者の顔つきに見る三つの特徴」『プレジデント』(2006年5月29日号)及び「経営時論/ダメ経営者に共通する『五つの性癖』」(2006年7月3日号)を参照した。 注2: ビジョン先行で後者の二つが欠如していればどうなるのか。最近の日本有数のブランド力をもつ企業の事例をみれば明らかである。 |
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