コニカミノルタがカメラ事業とフォト(フィルム)事業から撤退する。1月19日のこの発表は、筆者にとって今年になって早々のビッグニュースであった。何故「ビッグ」かというと、企業統治機構が機能して撤退が決まったからである。 コニカミノルタは企業統治の先進企業であることはよく知られている。2003年8月にコニカとミノルタは経営統合したが、同時に委員会等設置会社になった。取締役12名中社外取締役は4名である(注1)。 周知のとおり、委員会等設置会社は2002(平成14)年商法改正で導入された制度である。定款により委員会等設置会社となることを選択した大会社(みなし大会社を含む)は、従来の監査役制度の代わりに次の3つの委員会を設置しなければならない。
指名委員会は取締役の選任と解任を議論し、報酬委員会は役員報酬の基準や額を決定する。更に監査委員会は業務を監督・監査する。いわば米国流の企業統治の形をとっており、各委員会の委員の過半数は社外取締役であることが義務付けられる。コニカミノルタの場合、各委員会の委員には5名の取締役が任命され、社外取締役は複数の委員会メンバーを兼務して過半数を押さえている(注2)。 今回コニカミノルタがカメラやフォト事業から全面撤退することを主導したのは4人の社外取締役であった。もし社内取締役のみで意思決定したとすれば、全面撤退ではなく段階的縮小などのソフトランディングの道を選んだ可能性は高いのである。この意味で企業統治機構が効いたのである。 カメラもフィルムも急速に進展するデジタル化の波に翻弄された。05年3月期のカメラ事業の売上高は1,176億円で63億円の赤字、フォト事業は売上高1,515億円に対し赤字は14億円、両事業合わせて売上高は2,685億円、赤字は87億円であった。06年3月期は売上高はそれぞれ750億円、1,100億円で両事業合計1,850億円となる見込みなので赤字幅は更に拡大するだろう。 カメラ事業はソニーに譲渡できたのだから、これで経営資源を中核事業の情報機器分野、戦略事業の光学及びディスプレイデバイス分野、成長が期待される医療分野や計測機器分野などへ集中できる。 筆者は80年代から90年代にかけて、撤退しきれずに傷口をを広げた数多の事例を思い浮かべる。歴史に「イフ」はないとよく言われるが、あの時トップが撤退を決断していればと思うことがよくある。筆者は今回のケースが秀でた企業統治によってスピーディーな再生が実現するモデルになるように思われる。そして、次の命題を検証する材料となるように思う。 「企業統治に秀でた企業は、将来の優れた企業(業績のよい)を創造する」 さて、皆さんの会社にとって企業統治はいかなるものか。環境を客観的に評価して、タイムリーにかつ果敢に意思決定できる仕組みになっていることを祈るばかりである。 注1: 4名の社外取締役は次の通り(敬称略)。 藤原 菊男 (島津製作所相談役) 片田 哲也 (コマツ相談役) 井上 礼之 (ダイキン工業会長) 中山 悠 (明治乳業会長) 注2: 従来の監査役制度の会社との主な違いは次の5つに要約できる。
|
ご質問、お問い合わせは下記までお願いします。
© 1997-2005info@asktaka.com