数年前から世界中で失敗の研究が盛んである。日本でも一頃「失敗学」がブームをよんだ。なぜ今失敗の研究なのか、その理由はいくつか考えられるが、筆者は「失敗の研究」を広義の意味でのリスクマネジメントの一環としてとらえている。洋の東西を問わず、超優良企業といえども、失敗のリスクは避けることができないからだ。そこで、今月は「賢いトップ (Smart Executives) がなぜ失敗するのか」をテーマにしたい。 一昨年(03年)の春に原書が出版され、昨年6月に邦訳が出版された「失敗の研究」に関する書籍がある。米国アイビーリーグの一つダートマス大学ビジネスクスール(Tuck School)のシドニー・フィンケルシュタイン教授が書いた本である。欧米と日本及び韓国の大企業60社の「失敗のケース」を6年にわたって研究した結果をまとめたものだ。今、経営トップの間で密かに読まれているので、ご存知の読者も多いことだろう(注1)。 同書によると、失敗するパターンは次の4つに分類できるという(注2)。
次に、フィンケルシュタイン教授は、失敗の原因は次の4つであると指摘する。
現状が正しく認識され、危機感が社内に浸透していれば、現実の問題から逃避することはないだろう。トップの「間違った習慣」がなければ、社内の風通しも良くなり、軌道修正も可能になり、重要情報に対処できるようになっているはずだ。 同書の中には、自社の現状認識が正しいかどうかを確認するチェックリストとトップの「7つの間違った習慣」が示されている。以下に列挙したので、参考までに該当項目の有無をチェックしてほしい。 【現状認識のチェックリスト】
【見事に失敗するトップの「7つの習慣」】
(注1) Sydney Finkelstein, Why Smart Executives Fall And What You Can Learn From Their Mistakes (New York: Portfolio, 2003). 邦訳:シドニー・フィンケルシュタイン、橋口寛監訳酒井泰介訳『名経営者がなぜ失敗するのか?』日経BP社、2004年 (注2) 本原稿で引用した訳文は筆者による翻訳(意訳)である。 |
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