今月の提言


9月の提言:『縮小する市場で成長するには』



「縮小市場におけるビジネス・チャンスは少ない」、誰しもこのように考えるかもしれない。一部ではあるが、経営トップでさえも、業績の伸び悩みを縮小する市場のせいにしていると思われるふしがある。だが、たとえ事業領域の市場が縮小していても、戦略とマネジメントが優れていれば持続的な成長を維持することは可能なのだ。

例えば、子供服市場は少子化傾向の中で縮小市場の代表例だ。1971年〜1974年の第二次ベビーブームの時代には、出生数は毎年200万人前後だった。その後出生率は逓減し2003年には約112万人とほぼ半減した。しかしながら、ナルミヤ・インターナショナルのように高成長を続ける企業が存在する。

ナルミヤは1991年にジュニアマーケットに参入して、アパレル業界では空白ゾーンであった小中学生向け市場を開拓した。「買いたいものがない」「買ってあげたいものが無い」、こうしたマーケットにビジネスチャンスがあると判断して需要を創造したのである。

ナルミヤは4つの女児向けブランドと2つの男女向けブランドをもっているが、それぞれにオリジナルキャラクターを用いて、商品にストーリー性を持たせている点が特徴だ。そして洋服だけでなく、文房具やお弁当箱などのファンシーグッズまで揃え、子供のライフスタイルを提案している。

2002年3月、ナルミヤは渋谷の109パート2にジュニアブランドを集めた「ジュニアシティ」をオープン。1フロア120坪すべてをナルミヤブランドで埋め尽くした。さらに衣料のみならず、文具、雑貨、菓子など他社とのコラボレーションによりトータルにライフスタイルを提案して成功した。この点は、03年1月期、04年1月期の対前年売上高伸び率が20〜30%を示していることからも理解できるであろう。

同社の成宮社長は、心がハッピーになる「アパレル業界のディズニーランド」を目指すという。ナルミヤの成長力の源泉は、こうしたビジョンの下で異業種と連携しながらジュニア市場を開拓する点にある。

ところで、市場が縮小している業界を思いつくままに列挙すると、紙巻たばこ、アイスクリーム、醤油、ウイスキー、釣具、ボールペン、建設機械等々がある。このほか右下がりの縮小とまではいかなくても、成熟市場は数多い。多数の企業がこうした縮小市場、成熟市場の中で生存しているが、ナルミヤのように成長力を持続している企業がある。そのような企業は、次の3点のいずれかに注力しているケースが多い。

  1. 高機能製品の開発
  2. 新需要の創造
  3. ブランド力の訴求

市場の縮小や成熟化で業績が伸び悩んでいるとお考えの方々は、上記の3つによる成長機会を模索されることをお薦めしたい。但し、具体的に上記を推進するには、従来のやり方を踏襲すべきではない。何をすべきかが明らかになれば、それを新たなやり方で徹底的に行うことが肝要だ。経営トップに求められるのは、そのような変革のリーダーシップであり、ミドルには伝道者とコーチとしての役割が求められる。



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