今月の提言


8月の提言:『10年後の消費の潮流は?』



少子高齢化や晩婚化・未婚化など人口・世帯構造の変化はビジネスに大きく影響する。これらの変化に伴い、消費パターンが変わるからだ。また、時代の流れや人々の価値観の変化によっても消費行動は変容する。筆者は今後のビジネスを考える場合、次の6つの消費の潮流に注目している。

    【デモグラフィック要因による変化】

  1. 女性市場を支えるパラサイト消費
  2. 子供市場を変える6ポケット消費
  3. サービス消費の新たな顕在化


  4. 【時代・価値観要因による変化】

  5. 選択消費から選別消費へ
  6. X型消費の普及
  7. ディズニーランド型非日常消費の定着

晩婚化・未婚化によって、親と同居する未婚のOL「パラサイトシングル」が更に増加する。各種の調査によると、こうした女性の可処分所得とファッションへの関心は、一人暮らしのOLに比べて格段の差があることが分かっている。こうした親がかりの人達の豊かな消費行動を「パラサイト消費」といっている。

「6ポケット消費」は子供市場での消費行動をいう。少子化が進むことは間違いないが、そのバックには子供達の両親と双方の祖父母、合計6人のスポンサーが存在する。10年後には、パラサイト消費と6ポケット消費の潜在市場がさらに勢いを増すであろう。

サービス化経済の到来といわれて久しい。だが、本格的にサービス化が進むのはこれからだ。高齢化と少子化の進行、単身世帯の増加、労働力不足などはさまざまなサービス需要を生み出す。潜在需要の増加は供給量を増加させ、価格の低下をうながすことでサービス消費はさらに拡大するだろう。

従来は必需消費と選択消費とに分けることができた。ここで選択消費とは、生きていく上で必ずしも必要不可欠ではなく、個々人の趣味嗜好によって選択される商品・サービスのことをいう。現在は大雑把にいって、必需消費6割、選択消費4割といわれているが、10年後には選択消費の比率は更に高まるだろう。そして、消費者は単に選択するだけではなく、自分の好みやライフスタイルに従い厳しく選別する「選別消費」の時代に入る。消費者は自分らしさを一層大事にし、自分の好みにあった選別消費を行うようになるからだ。そうすると、企業らしさやブランド・イメージ、明確に差別化された商品・サービスが選別の鍵になるだろう。

日本人の消費行動は、欧米のようにピラミッド型ではなくX型だ。つまり、欧米では、オートクチュール(高級仕立て服)やプレタポルテ(高級既製服)の顧客層は、ピラミッドの上層、一部の富裕層である。ところが、日本では一般の消費者がGAPやユニクロなどで購入するとともに、高級ブランド店でも購入する。従来のピラミッド型の棲み分けはなく、「上も下もあり、顧客は両方を行ったり来たりする」という意味で、X型と呼ばれる。世界のブランド消費の45%は日本人が占めているのはこのためだ。なお、最近ではこうしたX型消費は米国の中流クラスでも観察できるといわれており、「ニュー・ラグジュアリー現象」と呼ばれている。

最後はディズニーランド型非日常消費である。1983年に開業した東京ディズニーランド(TDL)は、隣接するディズニーシーがオープンした01年秋までに、累計で2億6千万人集客した。日本人が2回足を運んだ形で、平均すると年間1400万人が来場したことになる。同様に、お台場、六本木ヒルズ、汐留などの賑わいは、非日常的な消費行動の現れである。10年後の社会では、こうした非日常的消費行動がさらに活発化するだろう。

では、こうした消費の潮流をどのようにビジネスに生かすべきか。この点は本稿で一般論を述べるよりも、経営トップや未来を担う読者の方々が自らの頭で考えるべきだろう(但し、物販ビジネスに関するヒントは下記の拙稿を参照)。

例年「8月の提言」は夏休み向けの読書特集である。今年は読書に代えて、夏期休暇を自社の未来像をイメージする時間に費やすことをお薦めしたい。


(注1)
本稿は次の拙稿の一部を活用した:竹生孝夫「物販ビジネスの有望分野を探る」『不動産[新活用事業]プラン集 '05』(綜合ユニコム、2004年8月末刊行予定)→予約をご希望の方はこちらへ!なお、「物販ビジネスの有望分野を探る」全文は こちらからもご覧いただけます。

(注2)
X型消費について詳しくは下記の拙著をご参照下さい。


【ご案内】5月末に拙著『ブランディング・カンパニー』が上梓されました。詳しくはこちらをご覧下さい!




(これまでの提言はこちらをご覧ください!)



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