さ迷い歩き 「量子の森」 (1)
朝日カルチャーセンター講座:量子力学の基礎

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0.はじめに

 大学教授の話を聞くのは40年振りということで、ちょっと緊張した気持ちで、新宿住友ビルの朝日カルチャーセンターの教室に入りました。講座のタイトルは、「量子力学の基礎」といい、講師は首都大学東京名誉教授広瀬立成でした。話の概要をまとめましたので、よんでいただけたら幸いです。

                                              2012年2月27日

    目  次
第1回: 物質とはなんだろう 人類の夢はこうして探求されてきた  
2012年2月24日
第2回: 量子力学を構築する ミクロの世界の特徴を解明する   
 2012年3月10日
第3回: 標準理論入門 宇宙開闢時代を解き明かす          
2012年3月24日


第1回: 物質とはなんだろう 人類の夢はこうして探求されてきた 
                                      2012年2月24日

 今日は第1回目ということで、「物質とは何だろう」という話です。話は数式を使わず、物理学の基礎のない人でもできるだけ理解できるようにやさしく話すということでしたが、私はこのような話ではきっとイメージをつかむことすら難しいのではないかと思っています(自分の好き勝手なイメージを勝手に思い浮かべることならできますが)。ガリレオは「自然は数学で書かれている」と言ったとのことですが、やはり数学の知識がないとなかなかより深く物理学を理解することはできないと思います。もちろん、一般の人が少しでも物理学に興味を懐くことはよいことだと思っています。

 第1回目の内容は概ね以下のとおりでした。
 1.歴史にみる物質観・宇宙観 ・・・アリストテレスの4元素説、デモクリトスの古代原子(アトム)説
 2.近代原子論 
  1)ラボアジェ、アボガドロ
  2)JJトムソン(陰極線の発見)
  3)量子論の芽生え(プランク量子仮説、アインシュタインの光電効果の解明)
  4)原子構造(ラザフォードの原子核の発見)

 今回の話の内容は量子力学の導入部にあたるところで、私としては概ね理解しているところです(詳細になるともちろんあたふたとしてしまいます)。デモクリトスの”原子”説はもちろん思弁的世界での想像でしかないのですが、2000年も前にそのようなことを考えていたということはやはりすばらしい人だったと思います。それに対し当時のギリシャの大思想家で「万学の父」といわれるアリストテレスが、形而上学的に?原子論に反駁し、葬り去ったということの方が教訓的だと思います。もちろん現在でも至るところに権威者がおり、権威で主張をまかり通すことが多々あるわけで、これはどうしようもないことなのでしょう。

 プランクの量子仮説は、実は私は何度も理解しようと努めるのですが、空洞輻射のスペクトル分布の式の発見から、どうやって量子仮説(e=nhν)に思いいたったのかが今一分からず、とりあえずそのまま受け止めています。アインシュタインの光電効果の解明(光の粒子説)は1905年のことですが、若きアインシュタイン(当時は特許庁審査官)がこの年にさらにブラウン運動の解明と特殊相対性理論の発表をしたことは、大変な驚きです。どうしてこんなことができたのか、不思議でたまりません(伝記などはあまり読んではいません)。

 ラザフォードは「原子核物理学の父」といわれているそうですが、昨年の原子力発電の大事故のことを考えると、いつも今日の「科学・技術」の意義について考えさせられてしまいます。そして、これはどんなに考えても私には結論を得ることはできません。死ぬまで疑問を感じながら生きながらえるのでしょう。


                                              2012年2月27日


第2回: 量子力学を構築する ミクロの世界の特徴を解明する 
                                       2012年3月10日


 今日は第2回目ということで、「量子力学を構築する」という話です。今日もおよそ40人くらいの老若男女(20、30代は少ないようです)の受講生が狭い教室にぎっしりと詰まって、熱心に聴講していました。私も居眠りをすることなく、真剣に耳を傾けました。

 第2回目の内容は概ね以下のとおりでした。
 1.原子論の歩み
 2.原子は分割不可能か? 
 3.ミクロの世界の不思議
 4.原子の量子力学:電子の状態を記述
 5.力とは何か:遠達作用と近接作用
 6.ゲージ理論:尺度を変えても、物理法則は形を変えない
 7.4種の力と交換粒子、力の性質(強さと作用範囲)、物質の要素(クォークとレプトン)

 原子論の歩みを5つに分けると次のようになります。
 1)前4世紀:       古代原子論(デモクリトス)
 2)17世紀半ば〜19世紀末: 近代原子論
 3)20世紀4半期:   前期量子論(プランクの量子仮説、アインシュタインの光量子論、ド・ブロイの物質波論、
                ボーアの原子構造論、ハイゼンベルグの不確定性原理)
 4)1925〜1950頃: 原子の量子力学(シュレーディンガーの波動関数)
 5)1950年以降:    現代の量子力学(標準理論)
 私自身は、現在”前期量子論”のあたりをふらふらと歩き回っているところで、へとへとの状態です。次の”原子の量子力学”に到達する頃にはくたばってしまうのではないかと思っています。

 1911年にラザフォードがラジウムから出るα粒子(最近話題に出る放射線のα線のことで、He(ヘリウム)の原子核です)の原子による散乱実験で、原子はプラスに帯電した小さな”原子核”とその周りをまわるマイナスの電荷を持つ”電子”から構成されていることを確かめました。このような原子のモデル(土星モデルともいう)は日本の長岡半太郎が提唱したものらしいですが、世界的にはあまり認知されていないようです。

 1900年にプランクが”光量子仮説”を発表し、光は粒子で、そのエネルギーは飛び飛びの値(E=hν、h:プランク定数、ν:光の振動数)をとるということを提案しました。また、1905年には、アインシュタインが光電効果を研究し、光が粒子であることを証明し、プランクの光量子仮説を裏づけました。講師はこれをもって量子力学の開始であると話していましたが、私は1900年のプランクの光量子仮説が量子力学の始まりかなと思っています。

 この後、多くの物理学者によって、多くの理論研究と実験が試行錯誤的に行われ、量子力学が発展していきました。この時代の量子力学は”前期量子力学”と言われます。デンマークのニールス・ボーアが”水素原子の原子モデル(電子は原子の飛び飛びの軌道(定常状態)を回っている)”を提唱し、フランスのド・ブローイは光が粒子性をもつのとは裏返しに、粒子は波の性質をもっているという”物質波(ド・ブローイ波)”を提案しました。さらには、ドイツのハイゼンベルグによって、有名な”不確定性原理”が発表されました。このように20世紀の最初の4半期は、量子力学が目覚しく発展した時期であり、量子力学をかじり始めた学生の頃、私はこの前期量子力学の発展の歩みに興奮を覚えたものですが、内容を十分に理解することはできませんでした(だから私はこの年になって再度量子力学を勉強してみたいと思ったわけです)。

 1922年頃、ドイツのシュレーディンガーが、ド・ブローイの物質波論のアイデアをもとに、これらの混沌としたミクロの世界を、有名なシュレーディンガーの波動方程式としてまとめ上げ、電子の状態をシュレーディンガーの波動関数という数式で記述することに成功しました(波動力学とも呼ばれます)。なお、ハイゼンベルグも、ほぼ同時にマトリックス(行列)力学を構築し、電子の状態を記述することに成功しましたが、その力学の理解や扱いが難しく、現在の量子力学では波動力学が使われているようです。

 これで、基本的には量子力学の土台が完成したことになります。実は、私が取り組んでいる量子力学の範囲はここまでで、1950年以降の”現代の量子力学(標準理論)”については、ほとんど勉強したこともなく、まったくわかっていません。ブルーバックスの本をいくら読んでも、お話としては少し分かるのですが、数学に裏打ちされていないので、実際はほとんど理解できない状態です。今後も理解をすることはできないとあきらめています。


                                          2012年3月10日


第3回: 標準理論入門 宇宙開闢時代を解き明かす 
                                       2012年3月24日


 今回は最後の講座です。講座内容は概ね以下のとおりです(1.から3.までは前回とダブります)。
 1.力とは何か:遠達作用と近接作用
 2.ゲージ理論:尺度を変えても、物理法則は形を変えない
 3.4種の力と交換粒子、力の性質:強さと作用範囲、物質の要素:クォークとレプトン
 4.基礎理論の統一(統一理論)
 5.ヒッグス気候:ゲージ対称性の破れ
 6.標準理論とは:統一理論+大統一理論
 7.量子宇宙論
 8.初期宇宙における規則性の形成
 9.現代の素粒子物理学の課題
10.超ひも理論
11.量子力学と観測問題
 
 前回までは、前期量子力学から量子力学の確立(シュレーディンガー方程式の発見)までで、私も独学でそれなりに勉強した部分でした。しかし、今回の内容は量子力学を基にした素粒子論で、私はブルーバックスの本で漫画的なお話程度を知っているだけです。すなわち、数学的ベースに基づいて勉強したことがないので、ほとんど理解していないといったところで、講師の話の内容は初めて聞くようなものがほとんどでした。それでも、話の流れはだいたい理解でき、素粒子論のキーワードとその流れが少し分かったような気がしました。先が見えてる私にとっては、恐らく素粒子論まではたどり着くことは不可能だと思います。

 とは言っても、せっかく話を聞いたので、ポイントと思われる点をちょっと述べてみます。まず、力の伝わり方ですが、”遠達作用”とは、力が瞬時に伝わることをいい、”近接作用”は力が波のように時間をかけて伝わることをいいます。ニュートンの時代から両説について論争があったようですが、現在は電磁波のように近接作用が支持されているようです。そして、電磁力は”ゲージ粒子”としての”光子(フォトン)”の”交換”による”相互作用”と考えるとのことです。よくわかりませんが、ああそうですかというしか言えません。

 次に世の中の”力”ですが、現在、”力”には4つあり、それぞれに対応して”交換粒子”があるとのことです。それは以下の通りです。
 @電磁力:   光子(質量はありません)
 A”弱い力”: ウィークボソン(大きな質量を持つ)
 B”強い力”: グルーオン
 C重力:    グラビトン
 アインシュタインは、一般相対性理論を発表した後、電磁力と重力をまとめた”統一場理論”を生涯研究したそうですが、成功しなかったとのことです(当時は、”弱い力”と”強い力”はまだ知られていませんでした)。

 物質を構成する要素とは何か?物質を構成する”素粒子”とは、陽子、中性子および電子です。そして、”重粒子”(陽子、中性子など)は”クォーク”から構成されているとのことです。他方、大きさのない電子やニュートリノなどは今のところ構造をもたなく、”レプトン(軽粒子)”と呼ばれているとのことです。その他にも、中間子といったものがあるそうですが、要するに私にはほとんど理解できません。

 4つの”力”のうち、電磁力と”弱い力”に注目し、”力”の統一を目指した理論が”統一理論”とよばれており、ワインバーグ(ノーベル賞受賞)等が提唱したのだそうです。さらに、”統一理論”と”大統一理論”(”強い力”を含める?)とをまとめたものが”標準理論”と呼ばれ、現在の物理学ではこの考えが主流になっているとのことでした(まだ重力を含めた理論は研究中のようです)。訳がわかりませんね。

 現代の素粒子物理学の課題としては、次の2点があり、多くの物理学者が日夜研究に励んでいるそうです。
 1)”標準理論”の確立: 最近新聞でも話題になった”ヒッグス粒子”の発見
 2)”標準理論を越える: ”超対称性粒子”の発見、”ダークマター”候補探し”超ひも理論”への架け橋

 ああ難しいですね。これ以上は書けません。書けばでたらめになるでしょう。お休みなさい。

P.S. 4月からは新しく”量子力学”講座(20回)を受講する予定です??講師は同じく広瀬教授です。内容は概要ではなく、もう少し詳しく(物理学科の1年生レベル?)なると思います。


                                                2012年3月26日

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