BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月18日・グラスゴー「Thank you, Andy.」

飛行機が安い。

インターネット接続し、メール送受信、ファイルのアップロードをしてからeasyjetのweb siteへ。グラスゴー→ロンドン片道の値段は、

157.50(朝)

77.50(昼)

57.50(夕方)

27.50(深夜)

という、発着時刻によって無茶苦茶に価格差のある体系。

それでも、鉄道に比べて昼でほぼ同じ、夕方以降ははるかに安い。フライトは1時間15分だし、ルートン空港からロンドン市内までは40分だ。もしも、もっと早く予約検索していれば、もっと安いはずだ。57.5ポンドでグラスゴー1605発ルートン1720着。なかなか魅力的だ。・・・しかし。購入寸前で踏みとどまった。まだロンドン行きは保留しておこう。

マッキントッシュめぐりとセルティックの試合は両立するのか?

今日のテーマはこれにつきる。

さて、まずは郵便局へ。一番近いところは土曜休業だったので、ホープ・ストリートまで行く。

途中、マッキントッシュ作のWillow Tea Roomsを通る。

局員のおじさんのグラスゴー訛りが難解。しかも、本などの小包を送るのに、バース、エジンバラ、グラスゴーと微妙にやり方が違うのでとまどう。とどのつまりが、おじさんが「オレがやるから寄越せ」ということになった。どうも。

地下鉄は1本。

市内の1日乗車券にはバスを含むものと含まないものがある。これを地下鉄の駅で聞いたら「バスも含むものはここでは売ってない、クイーン・ストリート駅へ行け」と言う。、クイーン・ストリート駅へ行ったら、目の前で窓口が閉まった。並び直すのも面倒だし、とにかくどっちを買うにも料金がわからないので市内交通のインフォメーションがあるセント・エノックへ。大きなショッピングセンターがあって、そこでついついハドック(鱈)のフライを食べる。

やっと見つけたインフォメーションとは、地下鉄駅のなかのカウンター窓口でしかなかった。バス込みは2倍もするので、バスなし、地下鉄とScotRailの近距離乗り放題を3.5ポンドで買う。すでに12時に近い。何をやってんだろう?

House for an Art Loverに行こうとして地下鉄に乗ろうとしたが、実は地下鉄ではなくてScotRailに乗らなくてはいけないことに気づいた。そもそも、グラスゴーの地下鉄は環状線が1本だけなのだった。

ということで、地下鉄で3駅目で降りてかつてのScotland Street School、いまはMuseum of Educationへ。しかし、展示はClosed。それでも敷地内には入れたので外観を撮影しまくる。

セント・エノックまで戻ってScotRailのセントラル駅まで歩く。House for an Art Loverはわずかひと駅先なのだが、1時間に2本の運行。これから出かけると、セルティックの試合にぎりぎりだ。前回の轍を踏むわけにいかないので、今日のところはあきらめておく。

マッキントッシュ巡りのつづき。

代わりにLight Houseというところが近くにあるらしいので探す。探す。しつこく探してやっとわかった。これはマッキントッシュが関わったもっとも最初の建築であるグラスゴー・ヘラルド・ビルを改・増築して建築・デザインのセンターにしたものだった。外からでは「どこがマッキントッシュ?」という感じだが。

せっかくなので、3階のマッキントッシュ・センターを見学。マッキントッシュの作品が一覧できる。ここでの最大の収穫はブロシャーで、グラスゴーで見られるマッキントッシュ作品を地図上にドットしてしかも開館日時を明示してある。ああ、これが昨日あれば・・・。


マッキントッシュといえば、この椅子。

Sold out。

そろそろセルティック・パークへ行こう。なんとかバスに乗ったが、渋滞で遅い。サポーターたちがドドドッと降りるところで降りればいいや、と高をくくっていたのだが、みんな別々のところで降りる。何となく降りたら、そこからスタジアムが見えた。

さあ、チケット。きっと残っているだろうと楽勝気分でいたら、セキュリティに「Sold Out」と一言でへこまされる。ここにはダフ屋がいるのかどうか? せっかくキックオフに間に合ったのに。もしも3時過ぎてもチケット入手できなかったら、House for an Art Loverへ行くか。4時まで開いているはずだし。

謎のアンディ。

雨降るなか、壁に背中を押し付けて震えていたら。

「試合を見に来たのかね?」
と、赤い鼻の男が話しかけてきた。
「イエス、でもチケットを持ってない」
そう答えながら、ダフ屋にしてはヘンだなあ、と思っていた。普通は「you need tickets?」と単刀直入に聞いてくるのだが。

「オレが2枚持っているから、どうだ? ついて来いよ」
男が取り出したのは厚い綴りのパスのようなものだった。

「アンディだ」
男はbuilder(建築屋)で、7マイル先に自宅があって、妻とふたりで年間シートを持っているのだと言う。
「今日はビッグ・ゲームなのに、あいつは買い物さ。信じられるかい?」

他愛ないことをしゃべりながら、半信半疑だった。まだ、値段の話をしていない。
「いくら払ったらいいんだい?」
そう聞いたら、アンディは何の話をしているんだという顔で
「nothing.」
と言った。

そうしてパスを渡され、ゲートを通り、席に着いた。ゴール裏の真ん中。

「ここに来たことはあるのか?」
「ない。初めてだ」
「そうか。ここはparadiseさ」

そんな楽園でのゲームの模様はこちら。アンディは、本当に好意で席を譲ってくれたのだった。こんなことは初めてだ。なんて言っていのかわからないが、少なくとも私にとってすべてのアンディはいいヤツだ。そして、スコットランドはいい国だ。

帰郷。

ショップに寄ってレプリカ・ユニフォームとマフラーを買う。5時過ぎで真っ暗。アルスターバスの車列。なんと北アイルランドから団体で応援に来ているのだった。いや、どうもアメリカのボストン、シカゴあたりからも。アイリッシュ恐るべし。

このあたりは典型的労働者街で、パブには緑白の縞のユニフォームがあふれていた。じつは、けっこう危ない地域なのだ。バスに乗ればいいものを、試しに歩いてみたら40分で中心部に着いた。なんだ、近いじゃん。

8時からのスコティッシュ・ダンスに行くプランもあったが、ちゃんとした食事を取りたい気分だったので中華レストランでスペアリブと海老カレーを食べる。インド料理でカレーを食わずに、どうして中華でカレーを食うのか? 謎だ。

ホテルに帰ってそのまま丸太のように眠る。

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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