キットを使ったビールの作り方(Brewing Beers using kits)


 それでは私がいつもやっているビール作りの手順を紹介します。
 私なりの工夫もしていますが、何かおかしいところもあるかもしれません。
 気づかれた方はご指摘頂ければ幸いです。

 尚、この手順は以下の条件でビールを仕込むことを前提にしています。
  総液量:5 Gal.US(18.9L)
  材料 :HOP添加していないモルトエクストラクト缶
      ドライモルト
      HOP(リーフ若しくはペレット)
      液体イースト(この手順ではエールイースト)
      アイリッシュモス(若しくは焼き海苔)

1.レシピを考える
  参考文献は米国自家醸造家協会(A.H.A:American Homebrewers Association)の優勝レシピ等を参考にしています

2.材料を入手する
  国内で大半の材料は入手できますが、HOPや液体イースト等はなかなか手に入れずらい
  必要であればE-MAILで海外に発注する。航空便であれば1週間前後で入手できます
  穀類などは重いので船便を選択する(船便は1カ月程度かかる)

3.液体イーストのパウチをパンチする
  イーストの種類にもよりますが、仕込みの最低3日位前にはパンチしましょう。
  <説明>
   液体イーストは2重構造のレトルトパウチのようなパッケージに入っています。
   パッケージの中には小さな袋に液体イーストが入っており、その外側をイーストの培養液が取り囲んでいます。
   使う際には外側からパッケージを強くたたいて中の小さい袋を破き、イーストを増殖させてから使います。
   パンチ後何日かすると写真のようにパッケージ全体がパンパンに膨れてきます。
  こうなったらイーストが元気に活動しているということですから,安心して次工程のスターター作りに移ることが出来ます。

4.イーストのスターターを作る
 消毒したコップなどに100ml位のぬるま湯(35度〜40度)を入れ、それに茶さじ1/2程度の砂糖又はドライモルトを入れる。
 そのなかにイーストを入れしばらく置いておく。
  (ただし、スターターの作り方に関してイーストに別途の説明がある場合にはそれにしたがって下さい)

5.道具の用意と消毒
 発酵容器・温度計・比重計・ザル・Grain Bagなどワートの仕込みに使う道具を用意し、家庭用の塩素漂白剤等で消毒する(仕込み開始1時間以上前)。

6.材料を確認する
 レシピに対応した材料(モルトエクストラクト缶・ドライモルト・ホップ等)がきちんとそろっているか確認する。

7.アイリッシュモス(ビールを澄ませるもの)を用意する
 アイリッシュモスが無ければ焼き海苔でも代用できます。
 焼き海苔は朝御飯の時に食べる10cm四角程度のもの1枚をぬるま湯に入れふやかしておきます。

8.発酵容器の準備をしておく
 発酵容器に10L位の冷たい水を入れておく

9.特殊穀類をひく
 クリスタルモルトなどの特殊穀類をミルでひく。
 特殊穀類は主に風味を付けるのに使う材料ですので、コーヒーと同じように使う直前にひくのが一番です。
 ミルがなければすり鉢でも出来ます(ただし時間は随分かかるし疲れる)。

10.ワート(WORT:麦汁とホップを煮込んだ溶液)の仕込み

10.1 特殊穀類の風味を抽出する(スティーピング)
 大きな鍋に3L程度の水を入れ70度になるまで温度を上げる。
 Grain Bagに特殊穀類を入れる。Grain Bagがなければあとでザルでこす)。
 Grain Bagに入れた特殊穀類を鍋に入れる(Grain Bagがなければ特殊穀類をそのまま鍋に入れる)。
 温度が下がるので、弱火で加熱し65度〜70度までの範囲に温度を維持する。
 この時に穀類をこがさないように注意する。
 30分経ったらGrain Bagを引き上げる。この際、浸していたお湯より少し温度の高いお湯(75度程度・容量は穀類と同じぐらいかやや多め)ですすぐとより風味が出る。
 Grain Bagを使わない場合は鍋の中身ごと別容器にあけ、この際にザルを使って特殊穀類をこす(お湯ですすぐのも同様に実施する)。

10.2 モルトエクストラクトとドライモルトを煮る
 10.1の溶液にモルトエクストラクト缶とドライモルト全量を加え煮る。
 ドライモルトは団子状に固まりやすいので、一度火を止めてから溶かしスプーンなどで細かくつぶしてから火をつける。
 ただ、どうしても団子状のものが残るがしばらく煮ていると溶けるので気にしなくても良い。
 ドライモルトはとても焦げやすいので、焦がさないように鍋の底からスプーンなどでていねいに混ぜる。

10.3 ワートにホップの苦みを付ける
 ワートにビタリングホップを加え煮る(合計煮込み時間60分)。
 HOPはワートが沸騰してから入れる。
 ホップをgrain bag等の袋に入れてワートに投入しても良い。

10.4 アイリッシュモスをワートに加える
 アイリッシュモス(又は焼き海苔)をワートに加え煮る(合計煮込み時間30分)。

10.5 ワートにホップのフレーバーを付ける
 ワートにフレーバホップを加え煮る(合計煮込み時間15分)

10.6 ワートにホップのアロマを付ける
 ワートにフィニッシングホップを加え煮る(合計煮込み時間は4又は5分)。

10.7 ワートを仕上げる
 煮込みが完了したワートを発酵容器にジャバジャバと空気が入るように一気にあける。
 この際ワートがあつい状態で作業がしずらい場合には、流しなどである程度ワートを冷やしてから作業しても結構です。やけどをしないよう注意して下さい。
 HOPカスは容器の口に取り付けたザル又はナイロンバッグでこす。
  (こしたHOPのカスは庭に埋めて肥料にしましょう)

 最終液量を18.9L(米5Gal)にする。

 発酵容器内のワートの温度と比重を計る。温度は25度位にする
  (高ければ容器ごと水に入れて冷やす)。

10.8 ワートの仕込み時間のまとめ
 10.2〜10.7のワートの煮込みに関する時間の流れをチャートに整理してありますので参考にして下さい。

 モルトを  ビタリング            アイリッ     フレーバ  アロマ
  溶かす   HOP              シュモス     HOP   HOP
       (完了60分前)          (30分前)   (15分前) (5分前)
   ▽    ▽                ▽        ▽     ▽
---------------------------------------------------------------------
        0     10    20    30    40    50    60
       (沸騰)                                  min

11.ワートにイーストを加え発酵させる
 ワートの温度が適温になったところでイーストスターターをワートに投入する。
 発酵容器のふたをし、水を入れた発酵栓を取り付けて密閉する。
 発酵容器の温度を18度から25度位の範囲に維持し発酵を見届ける(発酵が始まると発酵栓がポコポコいう)。
 発酵完了を発酵栓の具合で推測し(ポコポコいわなくなる)、最終的には比重計で確かめる。
 発酵期間は最低でも1週間は必要です。2〜3週間かけて発酵させる場合もあります。

<<注意>>
 温度が低い冬場にエールを発酵させる場合、液温が低くて充分発酵が進まないケースがあります。
 この状態でビールを瓶詰めしてしまうと温度が上がってから一気に発酵が進み最悪の場合破瓶してしまうおそれもあります。
 ですから発酵の完了は期間の経過だけでなく必ず比重計で比重を計った上で確認して下さい。
 比重計は2,000円程度で入手できます。
 1樽の仕込みを丸々しくじることを考えれば安い投資だと思います。

12.瓶詰め

12.1 器具を消毒する
 ビール瓶・王冠など瓶詰めに使う道具類を消毒する。
 1次発酵容器の中に殺菌液を作って仕込みに使う道具類を全部入れてしまえば、それでOKです。
 私は家庭用の塩素系漂白剤を使っていますが、自家醸造用の殺菌剤も売られています。

12.2 ビール瓶にプライミング用の砂糖を入れる。
 大瓶なら3g程度、中瓶なら2.5g程度入れる
 スティックシュガーを使うと砂糖の量が決まっているので作業が楽

12.3 ビール瓶に瓶詰めする
 ビールをビール瓶に入れる
 ビニールチューブでサイホンしても良いし、ボトリング専用のボトリングタンクを使うのも良い。
 どちらもなければじょうごを使って入れることになるが、その際には極力酸素に触れさせないようにそっとやる(ジャボジャボとやらない)。

12.4 王冠を打栓する
 打栓器を使って王冠を打栓する。
 18.9Lのレシピであれば大瓶25本以上のビールができる

13. ビールを保存する
 出来上がったビールを日のあたらない場所に保管する
 保管する際の温度にもよりますが、2週間から1ヶ月程度で飲めるようになります。

14.ビールを味わう
 家族・友人などと一緒に楽しく味わう。
 ホップのアロマ・フレーバー、特殊穀類の風味など色々な点で国産の市販ビールにはないはっきりとした特徴を味わってみましょう。




Morio Murakami Presents 03/Jan/1998
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