初めて亀を飼った方に(リクガメ編)

ここでは、亀を飼育し始めた方へ、私の過去の失敗談などを含めたアドバイスをしてみます。

はじめに

リクガメという生き物は本当にものすごく可愛い動物だと思います。つぶらな瞳、ちょこっと可愛い手足、あくびをしたり、スタスタ歩いたり、ムシャムシャ葉っぱを食べたり、むずかしい顔で気張ってウンチをしたり、あらゆる仕草がこれほど絵になる動物は他に見あたりません。

およそ爬虫類は嫌い!!とおっしゃる方でも、リクガメの赤ちゃんを見て心がときめかない人はいないでしょう。まさに万人が認めるかわいいペットです。

しかし、爬虫類の中で、リクガメほど飼育に神経を使い、長生きさせることがむずかしい動物はありません。たいへん臆病で神経質、飼育のスペースはカメの大きさにもよりますが、かなりの広さが必要です。普通に市販されている90−120cmの水槽を利用して一生飼育できるような種類はほとんどありません。

飼育環境に対しても気難しく、ほんのちょっとした温度湿度の違いで拒食したりします。もちろん過度にいじくられたりすると、てきめんに調子を崩してしまいます。爬虫類中最もストレスを感じやすい動物で、ストレスによる免疫力の低下から、いろいろな病原体の感染をうけやすいようです。

食餌に関しても、これだけをあげれば間違いない!!といったような便利なものがあるわけではなく、多くの先輩方がいろいろと試行錯誤しながら、健康に育て上げられるような食餌の研究をされております。毎日、新鮮で安全な草を求めて朝早くから草摘みをされている方も、大勢いらっしゃいます。

ペットとしての爬虫類としては、最も不向きな動物がリクガメかもしれません。でも飼育していて一番喜びを感じられるのも、リクガメだと私は思います。おいしそうにご飯を食べている姿を見ているだけで、これほどまで心が和む動物はリクガメをおいて他にありません。

リクガメを飼い始めた皆さん、頑張ってとにかく長生きさせましょう。自分の孫の代まで生きていけるんですから、リクガメは!

こんな人はリクガメを飼ってはいけない

のっけから厳しいタイトルですが、お許し下さい。これは自分への反省も込めております。

欲しいと思ったら前後の見境なくすぐにリクガメを買ってしまう人
リクガメと一言でいっても、砂漠棲のもの、熱帯雨林に住むもの、温帯域に住んで冬眠するもの、かなり高度の高い山地に住むもの、など、その生息環境はそれぞれ異なります。それによって飼育方法も全く違います。ましてや別の種類を一緒に飼育するなどもってのほかです。

飼育する場合は、そのカメの最終的なサイズ、習性、自分の家で彼らに快適な環境を終生与えてあげることが出来るかどうか、などを十分考えて下さい。

カメの価値をお金で判断する人
うちのカメは何万円したんだ。高いカメだから大事にしないと。あそこの店は同じ種類のカメがものすごく安く売っていてラッキー。安く買ったカメだから、病気になっても病院に連れていくのはもったいない。なんていう声を、たまに聞きます。

カメは骨董品ではありません。ひとつの大切な命です。くれぐれも金額で命に差をつけないで下さい。

飽きっぽい人
いうまでもありませんが、リクガメは本来たいへん長生きなはずの動物です。いったん飼ったら40年間は面倒を見る心構えでいて下さい。その間かかる時間、費用その他は膨大なものになります。また、興味が少し薄れてちょっと世話の手抜きをすると、たちまち不幸な結果を招くことになります。

飼われてしまった動物は、その運命のすべてを飼育者に委ねている、ということを忘れないで下さい。

のんきな人
リクガメを飼育する上でのキーポイントのひとつは、「良い意味で神経質になる」といったことのように思います。数日食べないけど大丈夫、ちょっと鼻水が出ているけれどそのうち治るだろう。こんな考え方をしていると、そのうちいつか落とし穴にはまります。

私の所に来院する方でも、ほんの些細なことで大騒ぎされる方のほうが、健康的にリクガメを育てていらっしゃいます。

一人暮らしで、ほとんど昼間はリクガメを部屋に置き去りにしている人
リクガメはたいへん手のかかる動物です。また本来昼行性の動物ですから、人工照明で無理矢理飼い主の生活時間に合わせることは、彼らの生理的問題からもあまりおすすめできません。また、昼間いないと、ほとんど太陽光線を与えてやれる時間がとれません。彼らの健康を長い期間にわたって維持するためにはフルスペクトラムランプだけでは不十分で、太陽光線の働きは絶対に必要だと思います。


どうです?大丈夫でしたか。かなり厳しいことも書きましたが、大切なリクガメの生命を守るためにはやむを得ないことです。上記のことは往々にして陥りやすいので、反面教師にして下さい。

それでは、次から具体的なことに移ります。

新しいカメを連れてきたときの、検疫の方法について。

身体の外部から分かる、各種の病的状態と、その対処の仕方。


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