君たちは上海料理を知っているか

菊花茶で上海気分


ものの本によると日本人の口には上海料理がよくあうとのことですが、日本でいわゆる上海料理を食している間はもう一つピンときませんでした。 ところが本場で食されている家常菜(家庭料理)には東京の下町あたりのお惣菜屋にそのまま出してもなんの違和感も無いものが多いので驚かされます。 黄豆芽油豆腐(モヤシと油揚げの煮浸し風(あるいは炒め))などはその代表格でしょうか。

ところでこういった本格的な上海菜は以前であれば本場上海や台北、香港へ行かなければ食せなかったのですが、ご安心下さい現在では新宿その他の地域に本場そのままの料理を売りにしている店が出現してきています。 今回宴会を行った上野の酔仙楼はその中でもきらりと光るものを持っている貴重なお店です。


さて宴会の菜譜ですが、まず最初は冷たい前菜として香干馬蘭頭が出てまいりました。 馬蘭頭は菊科の植物コンギクの葉ですが日本では手に入らないので春菊で代用しています。 新宿あたりのディープ系の店では春菊豆干などという名でメニューに載っていたかと思います。 次に出てきたのは鹹菜豆瓣酥で蚕豆と鹹菜(高菜漬の仲間)で作った温かい前菜です。 鹹菜から出る臭みが食欲をそそります。

鹹蛋黄蝦仁豆腐は鹹蛋から作ったソースで豆腐と小蝦を調理したものです。 日本では満足できる鹹蛋が料理に使われることはほとんどないのですがここのものはそこそこの味を出していたかと思います。 料理で印象に残っているのは牡丹園の海鮮茶碗蒸でしょうか。 またお菓子類では重慶飯店の蛋黄酥がぴか一です。

椒鹽排條はスペアリブを白酒に漬けたものをからっと揚げ、塩味で香菜とニンニクをまぶした料理で酒の肴にうってつけです。

小黄魚焼豆腐は豆腐と小黄魚の煮こみで上海家庭料理の定番です。

豆苗圏子は豆苗の炒め物の上にホルモン(豚の大腸)を配したもので野菜との相性がなかなかでした。 本来は草頭(三つ葉のクローバ=馬ごやし)を使うのですが日本では手に入れづらいので豆苗で代用しています。 草頭は本場では高級品の扱いで時期になると香港の上海料理店でも上海から空路で取り寄せるそうです。

目魚大[火考]はイカの照り焼き風のものかと思っていたのでこの料理が運ばれてきたときはてっきり別な料理だと思ってしまいました。 しかし後から上海人に聞いたところ作り方はこれで正解で、モンゴイカを切らずにそのまま鍋の下に敷きその上に豚の角切りを乗っけてじっくり煮こむとイカの味が豚肉にうつり絶品なのだそうです。 今回は食べやすいようにモンゴイカは最初っからカットしてありましたがイカの味がしみた豚肉の味はグッドでした。 特に打包されたかたの報告では2日ぐらい寝かした後の味は異常と言っても良いほどの美味さだったそうです。

毛蟹年[米羔]鍋仔はお餅と小ぶりの上海蟹の土鍋煮です。 じっくりと煮こまれた年[米羔]には毛蟹の味がしみていてなかなか楽しめました。

腐乳扣肉は腐乳で味付けをした豚の角煮です。 本場のものに比べると多少遜色はありますが一緒に食事をしたかたがたの評判は上々でした。

薺菜黄魚羹はナズナとイシモチ(正確にはフウセイ)のとろみスープで、上品で淡白なお味がグッドです。 ナズナは春の七草ですが今の時期でも手に入るようです。 上海料理では菜肉雲呑、菜包(精進饅頭)などでも薺菜を良く使います。 そう言えば以前冬の上海で食した薺菜炒冬笋の味は忘れることが出来ません。

今回はこれ以外に蝦雲呑と粢飯[米羔](ご飯を四角く固めて油で揚げたもの:焼きお握りのようでグッドです)を追加して、ビール2本、5年物の紹興酒3本込みで2万円でおつりがきました。 料理は特別なものは別として普通に注文すれば一人あたり2,3千円で充分満足できる内容のものになると思います。 ちなみに今回の参加者は5人です。



香干馬蘭頭(左)と鹹菜豆瓣酥(右)


鹹蛋黄蝦仁豆腐(左)と椒鹽排條(右)


小黄魚焼豆腐(左)と豆苗圏子(右)


目魚大[火考](左)と毛蟹年[米羔]鍋仔(右)


腐乳扣肉(左)と薺菜黄魚羹(右)



基礎データ
住所台東区上野4-5-9 三州屋ビル3階
電話03-3837-6648
営業時間午後5時に開店するようです。多分全天営業(最近では昼もやっているようです)
お勧め料理上海料理(家庭料理、宴会料理)、四川料理など
取材日時2000年9月




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