黄豆湯はお袋の味

黄豆湯(一人前)


黄豆湯、この料理について知っている日本人はまずいないでしょう。 でも、中華街や東京在住の上海系の人に聞くとまず最初に出てくる言葉は「お母さんが作っていたのを・・・」といった具合にほとんど例外なく母親の記憶に結びついているようです。 ここ中国飯店のマネージャーも別れ際に「昔(中国)は貧しかったのでうちのおふくろは同じ排骨で二回出汁をとって黄豆湯などを作ったものです。」と昔の思い出話をしてくれました。

今回は前日予約の人数が二人という悪条件にもかかわらずすばらしい料理を出していただいたお店の方たちにはとても感謝しています。 テーマといっても前日予約なのであい方のすっぽん(甲魚)が食べたいという要求に上海の家庭料理を食べたいと言う私の欲望を上乗せしただけのたわいのないものです。 結局、甲魚(春と秋が旬)と上海蟹(秋が旬)の旬のものに黄豆湯を中心とした家庭料理でメニューを組むことにあいなりました。

    メニューの内容は以下の通り
  1. 春菊と豆干の前菜
  2. 甲魚湯
  3. 上海蟹(生姜茶付)
  4. 油豆腐拌豆芽
  5. 炒交白筍(交は草冠)
  6. 北京[火考]鴨
  7. 葱炒芋[女乃]
  8. 黄豆湯
  9. 寧波湯団
  10. 西瓜

春菊と豆干の前菜は新宿のディープ系の店でも「春菊豆干」の名で出しているようで上海系の家庭料理では結構ポピュラーなようです。 でも、この店の一味違うところは野菜の火の入れ方が絶妙で微妙なところにぴたりと決まってくるところでしょうか。

この日のメイン甲魚湯はすっぽんをまるまる一匹使ったもので久しぶりにその味を堪能しました。 少な目の汁で煮こんでいるためかすっぽんの濃厚な味が伝わってきます。 ゼラチン質のエンペラ(君辺)の味は言うまでもなく身の味も相当にいけてました。

上海蟹は一見小ぶりですが実入りがとても良く、卵の分量もたっぷりとありました。 でも、私はオスのほうが好きですね。 紹興酒にはオスの味噌の方があうような気がするのですが・・・。 でも、これは最初に言っておくべきでした。すいません。

油豆腐拌豆芽、これも上海系のお惣菜です。 一見粗末な料理ですがこの味がすばらしい。 家庭料理なので他のものより幾分塩分きつめになっているところも好感がもてました。 ご飯を出してもらえばよかったかなとちょっと残念です。 でも、中国人は普段こういったお惣菜を食べているので体を壊さないのでしょうね。 これが、普通の日本人のような中華の食べ方を続けたらまず完全に御陀仏でしょう。

炒交白筍はマコモの醤油炒めです。 醤油で炒めたのははじめてなのでおやっと想ったのですがマコモの風味がとてもすばらしくこれもとても気に入りました。 マコモの料理では以前福満園でいただいたマコモと米粉の炒めがとてもすばらしかったのですがおそらくこれを超えています。

北京[火考]鴨はちょっと唐突な感じがしますがここの得意料理ということで出していただきました。 通常より時間をかけて「脆」の食館を追及したダックの皮は歯にあたるとカリカリと砕け散り多少脂っこい味もあいまって薄餅に包まれた黄瓜絲との取合せが絶品です。 他の中国飯店でもこの料理はこの店から持っていくそうです。

葱炒芋[女乃]はここの定番の里芋の葱炒めです。 これは寧波あたりの家庭料理のようです。

黄豆湯、これはとても手間をかけて作っていただいたようです。 前日から大豆を水に漬けて戻し朝からことことやって最後は蒸して仕上げたそうです。 写真のスペアリブを見ても判るようにちょっと箸でつまむだけでほろほろと崩れそうです。 その甲斐あってこの味もとてもすばらしいものでした。 最後を締めくくるのにふさわしい一品でした。


春菊と豆干の前菜(一人前)


甲魚湯


上海蟹(一人前)と生姜茶


油豆腐拌豆芽(一人前)と炒交白筍(一人前)


北京[火考]鴨(一人前)と葱炒芋[女乃]


黄豆湯(一人前)



基礎データ
住所東京都港区芝5ー13ー18
電話3798-1381,2,3
営業時間
お勧め料理蘿葡絲酥餅、寧波湯団、里芋の葱炒め、干し貝柱と干絲のスープなど
取材日時1999年秋




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