レア本一直線 -1- | <著者別目録に収録されなかった作家と作品> |
![]() | 文庫目録の変遷で述べたように、昭和34年ごろから角川文庫はそれまでの発行順につけてきた分類番号を徐々に作家名で整理し直した著者別分類に移行させていきますが、それまでに品切れになっていた作家の作品のいくつかは著者別目録に収載されずに目録から消えていきました。左の書影はその一冊、シラーの『素朴文藝と情念文藝』です。角川文庫の稀少本をあげるとすると、まずそれらの作家の作品ということになります。当時の目録を比較してみると、17作家18作品21冊あります。別項のリバイバルコレクションの時に重版されて稀少性を失った文庫もありますが、他の出版社の文庫にない作家・作品がたくさん含まれていることに驚かれる方も多いことでしょう。(いしい たかもり) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
発行順番号 | 作品名 | 作者名 | 編訳者 | 初版発行日 |
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84 | 素朴文藝と情念文藝 | シラー | 竹内 俊雄 | 昭26 06 10 |
89 | 世紀児の告白(上) | ミュッセ | 栗原 美佐子 | 昭26 11 15 |
90 | 世紀児の告白(下) | ミュッセ | 栗原 美佐子 | 昭26 11 30 |
92 | 沙漠の息子 | ルネ・モブラン | 深尾 須磨子 | 昭26 10 30 |
93 | さまよえるユダヤ人(上) | ウージェーヌ・シュー | 小林 龍雄 | 昭26 11 15 |
94 | さまよえるユダヤ人(下) | ウージェーヌ・シュー | 小林 龍雄 | 昭27 08 10 |
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一九世紀中半に起った新しい文学発表形式であるロマン・フーイットン(連載小説)は、波乱重疊の筋立てと劇的な息塞る描写の多くの大衆小説を生んだ。新興デモクラシー精神によって、当時のフランス国民の間に深く根を下したカトリック教の弊害を剔抉する意図のもとに描かれた本書は新聞連載小説隆盛の口火を切った傑作であった。 (『角川文庫解説目録★昭和30年4月』より) |
▲「さまよえるユダヤ人」 |
発行順番号 | 作品名 | 作者名 | 編訳者 | 初版発行日 |
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119 | 暁の女王と精霊の王の物語 | ネルヴァル | 中村 眞一郎 | 昭27 02 10 |
123 | 夫セバスティアン・バッハの回想 | マグダレーナ・バッハ | 服部 龍太郎 | 昭27 01 30 |
151 | 死のスターリングラード(上) | プリーヴィエ | 舟木 重信 | 昭27 05 15 |
152 | 死のスターリングラード(下) | プリーヴィエ | 舟木 重信 | 昭27 06 15 |
153 | 偉大なる王 | エヌ・バイコフ | 上脇 進 | 昭27 07 15 |
171 | 町人貴族・強制結婚 | モリエール | 水谷 謙三 | 昭27 09 15 |
177 | 愛は神ならず | ノエル・ヌエット | 石川 湧 | 昭27 08 30 |
197 | 白い女 | カイザーリング | 佐藤 晃一 | 昭27 12 15 |
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一九世紀前半の激しい時代の変転は無数の浪漫派の芸術家を生んだ。思想と感覚との沸騰的な解放の中で、彼等が一様に眺めていたのは、青白い中世期の月であり、金属的熱帯の海であった。作者の内部を流れた浪漫の血は現実への夢の氾濫を招き、シバの女王と伝道者ソロモンとの伝説を、近代の時間に再生せしめたのであった。 (『角川文庫解説目録★昭和30年4月』より) |
▲「暁の女王と精霊の王の物語」 |
発行順番号 | 作品名 | 作者名 | 編訳者 | 初版発行日 |
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249 | 阿蘭陀組曲・北方の歌 | デュアメル | 中村 眞一郎 | 昭28 05 31 |
252 | 動物園に入った男 | D.ガーネット | 龍口 直太郎 | 昭28 06 25 |
266 | ヴィクトリア女王 | ストレイチィ | 小川 和夫 | 昭28 09 15 |
268 | アクセルの城 | E.ウィルスン | 大貫 三郎 | 昭28 11 15 |
284 | マリウス | マルセル・パニョル | 永戸 俊雄 | 昭28 09 15 |
298 | 女だけの町 | E.C.ギャスケル | 川原 信 | 昭28 12 10 |
320 | 群盗<久保栄翻訳選集1> | シラー | 久保 栄 | 昭29 02 10 |
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デュアメルの「ヨーロッパの懇親地理学」にふくまれるこの二作は、彼独特の清明な叡智と詩が融合して、無類の散文詩的紀行文をなしている。その示唆する詩と真実の豊かさは早春の雨のように明るく人の心に滲み入ってくる。医者であり、詩人、劇作家、小説家、批評家であるデュアメルの最も純粋な面を本書は露呈している。 (『角川文庫解説目録★昭和30年4月』より) |
▲「阿蘭陀組曲・北方の歌」 |