Life ◆「レミングの集団自殺」の真偽 ◆



> そもそも「自殺」という行動は、進化的に見てとても不思議な現象です。
> 他の生物はこんなことはしません。


大量に発生したネズミが集団で入水自殺する、という噂話があります。
「レミングの集団自殺」という言い方で耳にしたことがあり、 つねづね不思議なことだと思っていました。

●本当にそういうことがあるのか?

調べてみると、それが事実かどうかは怪しいです。自分で見たことは無いし、 例えば「NHK・地球ふしぎ大自然」みたいな動物ドキュメンタリー番組で 記録映像を観たこともないと思います。

似たものだと、アフリカの大草原を移動するオグロヌーの大群が、 川を渡るためにワニが待ち構える流れに次々と飛び込んで行く、 というシーンは何度も観たことがあります。
ワニに襲われたり、流れに負けておぼれたり、多数が死んでしまいます。 これは見ようによっては「大量自殺行為」と解釈できなくも無い。

でも、それは「餌をとるために移動する」という目的のために、 川を渡るという副次的な行動があり、そこで起こってしまったことで、 自殺することそのものを目的にしたものではないでしょう。
「自殺する」という意識があるのかどうか? それは動物に訊かなきゃわからない。 それを考慮しても、人間の「明らかに死ぬことのみを目的とした計画的行動」 は異質なものではないでしょうか。

●それは進化的に安定か?

集団自殺して全員が死んでしまったら、その遺伝子は続きませんから、 もしそういう行動があったとしても、それは集団の全員ではなく、 一部に起こることでしょう。

例えば、生息密度が非常に高くなった局所的な集団に発動してしまうとか。 自殺遺伝子は全員が潜在的に持っているけれども、極限状態に置かれた時に初めて スイッチが ON になるというモデル。 それはありえるかもしれません。

生息密度の高いこと(や食料が不足すること)がストレスになり、 どうにも移動したくてたまらなくなる。 (そのままでいたら全員共倒れなので、移動する方がまし。) それで無理な大移動が起こり、その過程で多数の犠牲が生じる。 生息密度が低いところの集団は生き残る。
「動物の集団自殺」に見えるものはそういうシナリオで起こるのではないだろうか と推測します。



・ネットで見つけた情報:

2004/06/30 Takakuni Minewaki

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