■  ◆ 生命のはなし (7) ◆



花はなぜ美しく咲くのでしょう?

花とミツバチ

「花」というモノはけっこう、変なものです。葉っぱだけ茂らせていれば いいものを、植物は一体なぜ、こんな異質な(変な匂いや色の)ものを わざわざ作り出すのでしょう?

植物自身にとって、花が鮮やかであることはなんのメリットでもありません。 だって、彼らには眼がないんですから。
花を見つけ、寄ってきて受粉をしてくれる生物(昆虫)がいるからそこに コミュニケーションがあり、意味があります。 逆にいうと、昆虫がいなければ、花という形態を持つ植物(顕花植物)は ありませんでした。実際、顕花植物は歴史的に昆虫の出現より後のもので、 それまではシダや裸子植物などの、他の生物の助けを借りずに受粉する、 地味な植物のみでした。

花とミツバチ、結局他人だから、何らかのコミュニケーションをしなくては ならない。より鮮やかで虫に見つけられやすいもの、より強い香りを出すもの、 より花粉を運んでもらいやすい形のもの…。

  より多くの虫にアピールし、多くの花粉を広く運んでもらえる
→ より多く受粉できる
→ より多くの種子ができる
→ より多くの子孫を残せる
→ 個体数が増える(繁栄する)

とにかく地味でいたら虫に受粉を手伝ってもらえず、子孫を残すことができない。 つまり、「花がある」ことは、「子供を残すことに有利」であったわけです。

今僕たちが見ているのは残ったものだけです。
だからみんな花は(虫にとって)鮮やかに見えるはずです。人間にとっても 花が鮮やかに見えるのは、虫の視覚と人間の視覚がそれほど違わない ということなのでしょう。

◆ 果実と鳥

果実と鳥の場合も、花と同様。

植物自身にとって、果実が鮮やかで甘いものであることはなんのメリットでも ありません。果実を食べて、種を運んでくれるものがいるからそこに コミュニケーションがあり、意味がある。
鳥にとってより魅力的な果実をつけるものが、より多く種をばらまいて もらえる。より赤く鮮やかに、より甘く。そんな果実をもつものだけが 選択されて広がっていく。

今僕たちが見ているのは残ったものだけです。
だからみんな果実は(鳥にとって)鮮やかで、おいしい。 人間にとっても果物がおいしいのは、鳥や虫の味覚と人間の味覚がそれほど 違わないということなのでしょう。



「花はなぜ美しいのか?」に対する別の答えは、 こちら を読んでみてください。 (2003/01/05)


・参考書物 → 「花の性 〜その進化を探る〜 / 矢原 徹一」
1993/07/08 T.Minewaki
2003/01/05 last modified T.Minewaki

8: ダンゴムシの戦略
生命のよもやま話
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