◆ 空は飛びたし羽根は生えず ◆


僕は基本的に 「生物自身の意思と進化方向は関係ない」
と考えています。(ただし、遺伝子操作を行う人間は例外。)

悲しいランチュウ

金魚を思い浮かべてください。
わかりやすいところで、出目金とか、ランチュウとか。 (ランチュウって、高いのは1匹50万円するんだって。げげ。)
金魚は、野生には存在しない生物です。 人間によって、人間の好みに合うように「品種改良」されて 変わってきたものです。 人間なしでは生きられず、人間に飼われ、餌を与えてもらい、 水槽を掃除してもらうことで生きています。

最初はちょっと変わった色形の野生の魚を取ってきて、それらを いろんな組合せで交配し、試行錯誤を繰り返し、偶然の奇形 (突然変異や組み合わせの偶然)がさらに奇形を生み、 でもその中でたまたま小さい確率で「人間の目に美しいと映る」形 をしたものが生かされて(他は殺されて)、続いてきました。

なんにせよ、金魚は今生きている生物です。他の生物と同様、 尊敬すべき同居人です。
見方を変えると、金魚はこの厳しい世界で「人間に気にいられ、 世話してもらう」という戦略によって生き延びています。 そうなるように進化してきた、といえるでしょう。

ここで、質問です。
金魚にこう進化していこう、という意思はありましたか?
野生の川に住んでいた金魚の祖先は、「人間に気にいられる ことで生きていこう」という目的と意思があったから、金魚に なったのですか?
金魚に何の選択肢がありましたか?
意思と進化に、どういう関連がありますか?

金魚は何を考えているのでしょう?
「自分の子供は、もっと尾を長くしよう、そうすりゃもっと 人間に好かれる」と考えているのでしょうか? 交配は人間に コントロールされています。
金魚が考えているのは、(もちろん僕は知りませんが、推測で) 「おなかへったなぁ。あ、イトミミズだ。食べよう。ぱく。」 こんなもんではないでしようか。

金魚だけでなく、ブルドッグも、サラブレッドも、ホルスタインも、 あきたこまちも、少なからず同様の道筋で進化してきた生物です。

これは人為淘汰で特殊なケースだ、と誰か反論するかもしれません。
でも、花と昆虫の共生関係が進化した筋道も、お互いに選びあった、 と言うだけで同じようなものです。自身の意志でコントロールして 進化の方向を決めたわけではないのです。


1995/06/01 T.Minewaki
1995/09/28 modified for HTML T.Minewaki
2000/02/29 last modified T.Minewaki
生命は渦である (1)
生命のよもやま話
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