◆ ホット・ゾーン / リチャード・プレストン ◆

 書 名:ホット・ゾーン(上)(下) / The Hot Zone
 著 者:リチャード・プレストン / Richard M.Preston
 訳 者:高見 浩
 出版社:飛鳥新社 1994/12



1994年末からベストセラー街道爆進中の本ですから、いまさら
知らない人もいないと思いますが。

これはぞっとする本です。
この本の最も怖い所は、「ノンフィクションである」こと。

映画「アウトブレイク」も怖かったですが、 あれは物語ですから、
ラストにはウイルスの宿主が見つかり、ワクチンが作られ、病人は
元気になって、恋人は仲直りします。観客は救われた気持ちで
映画館を後にできます。

しかし、現実のエボラウイルスについては、なにも解明されて
いないし、治療法もありません。強烈な致死率のみが共通です。
それがアフリカ奥地のどこにいるのかもわからず、誰かがそれに
触れたら最後、 逃れる術はありません。

それは、アフリカのどこかから、1日もあれば世界に広がることが
可能です。今日の発達した国際輸送力は、ビジネス文書を1日で
地球の裏側まで送ることができる半面、ウイルスをも運ぶことが
できるのです。

ウイルスは小さく、単純で、寿命(複製間隔)が短いため、すぐに
変異します。そのため、宿主となる生物種を乗り替えて続いて行く
ことができ、人間によって変化させられつつある環境にも耐えて
いられます。
単純なるがゆえの優れた戦略です。

「熱帯雨林の復讐」などという表現は好きではないですが、そういう
危険を意識せずに森林を切り開いて来た人類の行いは、思慮が浅かった
と反省するべきです。この本の読者は少なからずそう思ったはずです。
とはいっても、本格的に人類の危機的状況が訪れない限り、この先も
おそらく熱帯雨林の開発が控えられることはないでしょう。


1995/07/10 T.Minewaki
2001/06/04 last modified T.Minewaki

ウイルスなんて怖くない?
アウトブレイク (映画)
生命のよもやま話
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